第二話 俺、外道にお仕置きします。その7
今回は悪党のターンということでw
「ノルマが達成されていないィィ! 私は五百万集めろっつっただろがァァ~~!!」
「「「「ヒ、ヒイィィ!!」」」」
黒板を爪で引っかいた時に生じる不快な音、またはチェーンソーなどで金属を切り裂く時に生じる不快な音――とまあ、そんな不快極まりないふたつの音が合体し、さらに不快さを増したモノに昇華した地獄の旋律と言っても過言じゃない怒鳴り声を張りあげる女に対し、恐れをなした四人の男は、ほぼ同時に悲鳴を張りあげ、ドシャッと尻餅をつく。
「お嬢、お許しを!」
「てか、これ以上続けたらパクられるっすよ! もうここらでやめませんか?」
「ですですです!」
「なんだかんだと、合計で一千万円くらい集まったじゃないですか! ま、まだやるんですか?」
「当たり前だ、ゴルァァ!! 私は最低でも五千万円ほしいのよ! わかったら、さっさと金を持ってそうな年寄りを見つけ、そいつらの息子や娘になりすまして電話をかけろやァァ!!」
女は再び不快極まりない怒鳴り声を張りあげる。ム、今度は四人の男のひとりに右足の脛を左足でガッと蹴り飛ばす。
「ひ、ひぎぃぃ! お嬢、マジで許してください!
「うわあああ、それはやめてください! ぐ、ぐぎゃあああ!」
今度はバンッという甲高い音が響きわたる。女がモデルガンで男たちを何度も射撃する音である。ちなみに、女のモデルガンは違法改造が施されたモノなので、その威力は市販のモノの倍だ。そんなわけで威力が倍増したモデルガンから放たれたプラスチックの弾丸とはいえ、当たりどころによっては大怪我を負ってしまい可能性も否めないだろう。
「ああああ、イライラする! どうして上手くいかないのよ! クソがァァァ!!」
「ひぎぃぃ! や、やめてください! これ以上、撃たれたら死んでしまいますゥゥ!」
「うっせぇな! 私を怒らしたアンタたちが悪いんだ! 怪我はその代償と思え!」
「ぎゃ、ぎゃああああっ! お嬢、そりゃないっすよ! ぐあああっ!」
さて、子分と思われる四人の男たちに対し、容赦のない仕打ちを行う女の名前は船越陽子。S市内にある某名門大学に通う容姿端麗で異性にも同性にも人気がある二十歳の女子大生である――が、裏の顔は同じ大学に通う男子たちと共謀し、お年寄りから息子、娘を装い多額のお金を騙し取る俗に言うオレオレ詐欺という外道な行為を繰り返す毒婦である。ちなみに、子分の男たちは船越と同じ大学に通うオレオレ詐欺の共謀者ではあるが、関係的には利用される側と言った方は正しいのかもしれない。
そうそう、彼女らがいる場所は、S市の繁華街こと浪岡商店街アーケードの路地裏にある雑居ビルのひとつであり、船越の祖父が所有物でもある――とまあ、そんな雑居ビルを拠点に活動している。
「そういえば、お嬢、納田の姿が見えませんが、まさか……」
「ウフフ、気づいた? アイツはさぁ。〝コイツ〟を試しに使ってみたらさぁ、バーンと精神が壊れちゃってさぁ~☆」
「「「「うわあああ、それを近づけないでくださいィィ!」」」」
仲間がもうひとりいたっぽい物言いだ――ん、船越が首からぶらさげている赤い手にかたちをした装飾品のついた首飾りをチラつかせると同時に、仲間の男たちが再び、悲鳴を張りあげる。なんだ、あれは!? ほのかに光っているぞ。
「キヒヒヒ、アンタたちでも実験をしてみたいけど、今回はやめておくわ」
「「「「ふ、ふうう……」」」」
「さぁて、次のターゲットとなる年寄りのデータをまとめておいたから、ちゃっちゃと電話をしてもらおうかしらねぇ!」
「「「「は、はいィィ!!」」」」
船越はニコッと微笑む。しかし、彼女の眼は笑っていない。んで、それがわかる子分たちは一斉に悲鳴をあげ、今いる部屋に設置されたデスクの上に置いてある電話に飛びつくのだった。




