第二話 俺、外道にお仕置きします。その6
「主犯格は女子大生……だと!? でも、絶対そうは見えない清楚なお嬢様って感じだぞ、おい!」
「うん、このお姉さんがオレオレ詐欺グループの主犯格みたいだなんて信じられないよね、ミケちゃん」
「人を見かけで判断しちゃダメってヤツね」
「表の顔は善人でも、裏の顔はえげつねぇ悪人って輩はいっぱいいるっす! その写真の女がイイ例だと思うっす、ご主人様」
元締めと言っても間違いない沙希からの標的の詳細が記されたメールが、俺のスマホに届く。そんなメールによると、依頼人――いやいや、依頼猫のサーシャの飼い主である春子婆ちゃんの疎遠状態の一人息子を装い騙し、八十万円を奪い取ったオレオレ詐欺グループの主犯格はS市内にある大学に通う女子大生のようだ。
「主犯格の名前は船越陽子、そして仲間の男が四人」
「仲間の男は篠原、佐藤、黒河、瀬戸」
「ふむ、標的は五人みたいね。浪岡商店街アーケードの路地裏にあるオンボロ雑居ビルの四階にある事務所を拠点にオレオレ詐欺という外道な行為を繰り返しているようね」
「ご主人様、今から乗り込んで外道共を仕置きするっす!」
「そうしたいが、少し悩む……」
「沙希先輩のメールには、件の標的はレベル3って書いてあるし……」
レベル1は安全、レベル2は普通、レベル3はちょっと危険、レベル4は危険、そしてレベル5は超危険――とまあ、そんな仕置きの標的にも当然レベルがあるわけだ。さて、黒猫サーシャの依頼として、俺たちが仕置き&八十万円の奪還しなくちゃいけない相手は、ちょっと危険レベルに該当するレベル3の標的だ。そこらへんを考えると、真っ向から突撃するかたちで外道共の巣に飛び込むと、逆に返り討ちに遭いそうな連中である。
「さて、どうする?」
「うーん、一応、外道共の潜伏場所の近くまで言ってみようか、ミケちゃん」
「偵察なら任せろっす!」
「てか、アンタ達、忘れているわよ。アンタ達は不可能を可能にする存在――魔法少女だってことを! 真っ向から敵陣に乗り込んでボコボコにできるはずよ! この私もいるわけだし~♪」
「ぎゃ、逆にそれが不安なんだよなぁ……とにかく、油断は禁物だ! 魔法少女であっても――」
「うん、ミケちゃんも私も初心者魔法少女だしね……」
すっかり忘れていたぜ。今の俺は不可能を可能にすることができる魔法少女だってことを! だけど、なんだかんだと油断はできない。俺や愛梨は魔法少女といっても初心者なのだから――。
「あのぉ、美樹原さんと三島さんは穏行の術を使えますか?」
「あ、無理です!」
「穏行の術って風景と一体化し、姿を見えなくする術でしたっけ?」
「はい、某ゲームの敵キャラが使ってくる光学迷彩みたいな術です。同じ魔法少女だったりしないかぎり、普通の人間の眼力では絶対、姿は見えなくなると思います。それを今から伝授しましょうか?」
「そ、そうか! 標的に俺たちの姿を見えなくすればいいのか! その手があったぜ!」
と、猫の間に俺たちと一緒にいる小狐丸の女将である綾音が、そう訊いてくる……もちろんです! 伝授を是非ともお願いしたいところだ!
「綾乃ちゃん、妖狐流呪術の初心者用教本を二冊用意してちょうだい」
「は、はい、お姉さ……いえ、女将!」
妖狐流呪術の初心者用教本? とまあ、そんな本を持った仲居の綾乃が猫の間に入ってくる。
「穏行の術は初心者でも、すぐに覚えられると思います~☆」
「そ、そうなんですか? うーむ……」
すぐに覚えられるねぇ……う、綾音の口許に弧を描く三日月のような笑みを浮かべている。すっげぇ、過酷な伝授が待っていそうな予感がするぞ!




