第二話 俺、外道にお仕置きします。その4
登場人物紹介
・綾音――地下旅館の小狐丸の女将。その正体は妖しい狐。
○○県S市の周辺には数多の洞窟が存在するってことを俺は後々、知ることとなる。無論、洞窟はS市内にも存在する――ああ、ペットショップのケットシーの地下洞窟も、そのひとつであることは言うまでもないかな。
「「「いらっしゃませぇ!」」」
「お、おう!」
ペットショップのケットシーの地下に広がる洞窟内にポツンとたたずむ小狐丸という旅館の中に入ると同時に、綾乃を加えた九人の仲居さんたちが、元気いっぱいな挨拶と笑顔で俺とアリス、そして愛梨とアフロデューテを迎える。
「狐耳の仲居さんがたくさんだね、ミケちゃん」
「あ、ああ、みんな狐耳が生えているな……わ、本物だぞ!」
「痛いです! 引っ張らないで!」
「お、おう、悪かったな……うお、本物だァァ~~! 本物の狐耳だぁ!」
試に綾乃の狐耳を右手の人差し指と親指でつまんでみる――むぅ、本物だ! ってこたぁ、綾乃や仲居さんたちは――。
「ウフフフ、いらっしゃいませ。おふたりの話を沙希さんから話を聞いていますよ」
「わお、今度は狐耳の女将!」
綾乃を加えた九人の仲居さんに続くかたちで、この旅館、小狐丸の女将と思われる尻尾が九つある狐の絵柄刺繍されている黒い着物姿の女性が現れる。歳は二十代半ばだろうか? 長い黒髪を頭の後ろで結いあげた長身痩躯の和風美女って感じだなぁ――あ、ああ、仲居さんと同じく、狐のような耳が見受けられるぞ!
「な、なあ、アンタたちは何者なんだ!? その狐耳は本物みたいだし!」
「私たちですか? 私たちは妖狐です。そして、ここは私たち、妖狐が営む旅館です。ああ、私は女将の綾音と申します」
「は、はあ……よ、妖狐!? 狐の妖怪じゃないか!」
「狐の妖怪? なんのことでしょう? ん~むしろ我々、妖狐は神獣と言っても過言じゃありません。あのウマノミタマ様の化身でもありますから――」
「し、神獣ねぇ……」
狐耳の女将の名前は綾音。んで、自分たちは妖狐だって、その正体を呆気なく白状する――てか、ウカノミタマ様って誰!?
「フン、なにも知らないのね。ウカノミタマ様とやらは、この国でお稲荷様と呼ばわれ広く信仰されている神のことよ。三十路近いのに勉強が足りないわね」
「うっせぇ、年は関係ないだろう!」
フンと鼻で笑うアフロディーテが、小狐丸の女将こと綾音が口にしたウカノミタマ様とやらについて説明する。おい、年齢に関係なく知らないものは知らないんだ!
「そちらのアヒルさんはウカノミタマ様について知っているようですね」
「フフン、当たり前よ! 私の白鳥の姿で、この世に顕現した美の女神……当然、博識でもある~☆」
自慢かよ、おい! てか、どう見てもアフロディーテは白鳥じゃなくてアヒルだ。そこらへん誰も気づく真実――と言いたいねぇ。
「靴は、そこで脱いでよね! あ、それと一緒にいるワンコを抱きかかえて店内に入ってくれるかな?」
「お、おう、わかったからにらむなよ!」
本物かどうか試しに耳を引っ張ったことを恨んでいるのか? とにかく、仲居の綾乃はギロッと俺のことをにらんでくる。
「では、依頼人がいる場所へ案内します。ささ、こちらへどうぞ」
まあなんだかんだと、女将の綾音の後について行くかたちで俺たちは、妖狐が営む地下旅館こと小狐丸の店内に足を踏み入れる。




