エンディング 別れは再会の約束
これで、今回のコラボ作品がエンディングです!いやぁ…、放置しすぎた…。ではでは、エンディング、お楽しみください!
あの後米子先輩は先に朝食をごちそうになり、拓人さんの車で道場に連れていって貰ったらしい。俺達の分の朝食は、長浜と衿真を起こしに行っている間に準備されていた。卵焼きと味噌汁、魚の干物とかなり簡素なものだけど、元々時間が無かったせいもあるし俺達は客だ、出されたものにケチ付けることはない。でも、今リビングにいる人数には疑問がある。何で結美先輩しか居ないんだ?
「あの結美先輩、他の人はどこに?」
「ん~……? あぁ、拓人兄さんはあの人を送りに行ったよ。未希と貴仁さんはぶっ倒れてる。いつものことだから、気にしないで大丈夫だよ」
俺のせいかも、と俯きかけたが、結美先輩の絶妙なフォローにヘコまずにすんだ。それから朝食を食べて、結美先輩に町を案内してもらった。
「ここには他にどんな妖怪がいるんですか、先輩!」
「いや……その、頻繁に出ないしさ、普通は見えないよ……」
「えぇ! じゃあ悪魔は?!」
「……み、見たこと無いよ……?」
ぎゃんぎゃん言い合う長浜と衿真に挟まれて、結美先輩は疲れ果ててるみたいだ。そりゃそうだよな、同じ質問、今ので何回目だよ。堅山先輩は欠伸しながらついてきていて、長浜と衿真がどうしようもなくなった時には仲裁に回ってくれてる。でも、慣れてないと混乱するよな。結美先輩、若干引いてる。ちなみに、心霊スポットについて後藤が聞いたら、恐ろしい笑顔を向けられた。そ、そりゃあんな事件起こされたらなぁ……。
「ところでさ、みんなが泊まってる旅館ってどこら辺? どうせだし、送るよ」
「え! 良いんですか?」
「うん、ついでついで」
旅館まで送るって言われて、衿真のやつバカみたいにはしゃいでやがる。長浜の罵声も聞いてない。そんなこんなで一日が過ぎ、ついにこの旅行の最終日になった。
「俺はここに永住したい。是が非でも引っ越しを考えたい……。とにかくここに残りたい……!」
「バカじゃないの? 悪魔がいないなんて考えられない!!」
「誰がバカだ、このチビ!」
また始まった。こいつらの喧嘩はコミュニケーションだと思って放って置こう。
「大事件もあったけど、それなりに楽しかったよな、山手」
「バカ野郎、大変だっただろうが! まぁ、楽しかったのは……否定しないが……」
正直、怖かったけど楽しかった。前に分からなかった、未希先輩と結美先輩の以外な一面が見れたし、先輩二人の家族にも会えたし、それなりに楽しかった。
「だろだろ? やっぱり来て良かったじゃん。……ってあれ?」
後藤が変な声を出して旅館の門の方を指さした。それを見た堅山先輩が少しだけ、本当に少しだけ顔をしかめて後ろで言い争う長浜と衿真の方へ歩いてく。何があったんだよ、本当に。
「……ハァ、間に……あった……」
「えっ!! 未希先輩?! なんでここに!!」
膝に手をあてて息を整える未希先輩。ランニングスタイルっていうのか、短パンにタイツを穿いて、半袖にぴったりした長袖の服を着て、見てるこっちが暑そうな格好で汗を腕で拭いてる。日焼け防止にしても暑そうだな……。汗を拭く腕と反対の手に、小さな紙袋を持ってる。何を持って来たんだ?
「なんでって……、忘れ物を届けにきた」
さも当然と言わんばかりに、小さな紙袋を突き出してくる。いや、なんで! 誰も何も持っていってないぞ! 何を忘れるんだ!
「とにかく、うちに無い物があったからそっちの忘れ物だ。良いから持っていけ」
「え……、えっと……」
「悩まず持っていけ。こっちは自主練中なんだ」
躊躇う俺にしびれを切らしたらしく、後藤に紙袋を押し付けて、未希先輩は元来た道を走って行ってしまった。マジで忘れ物届けに来ただけかよ……。しかし綺麗な走り方だな。もしかして、陸部の長距離専門かな。
「これ、忘れ物っていうかお土産じゃないかな? 未希先輩、なんで忘れ物って言ったんだろう」
「何言ってんだ、後藤?」
袋の中身を見て首をかしげる後藤の手元を、俺も覗き込んで見た。確かに、佐伯神社の名前が入った小袋が六個分入っている。ん? 六個分?
「なんで六個分?」
「あ、名前書いてある。これ山手のだって。長浜さんと衿真のもある。あ、米子先輩と堅山先輩の分もちゃんと入ってる!」
ひょいと渡された袋には、筆で俺の名前が書いてあった。字が綺麗だけど、誰が書いたんだ? 未希先輩か? 後藤は今ここにいる全員に小袋を渡してる。
「中身は……、キーホルダー? あ、紙が入ってる。……水晶、オニキス……? 後藤、お前何が入ってた?」
「俺? 水晶とターコイズって書いてあった。長浜さんと衿真も一緒だよ」
「俺は水晶と瑠璃って書いてあった。瑠璃ってなんだ?」
「三角形の頂点の青い石だと思います」
オニキスとかターコイズとか瑠璃とかって、石の名前なんだ……。丁寧に作ってある、手作りかな?
「綺麗だな。紙には御守りって書いてあるし、付けとこうよ、な」
そうだな、ちゃんと御守りは付けとかないと。どこに付けようか悩んでると、行きに聞いた低いエンジン音が俺達の前に止まる。あぁ、行きと同じトラウマが見える……。だが仕方ない、と俺達は行きと同じようにトラウマに乗り込んだ。帰りもスピード地獄に酔ったのは言うまでも無い。
こうして、名もない舞台は幕を閉じた。拍手もカーテンコールも存在しなかったが、一夏の思い出にはちょうどいい何かが、この旅行にはあった。今更ながら、上弦町に来て良かった、と思っている。でなければ、この四人と会うことはなかったんだから。
ぁ、もう一話蛇足が付きます。読んでも読まなくても大丈夫です。付き合ってくださる優しい方がいらっしゃれば嬉しいです!