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一幕-2 霧に隠れる歪なモノ

 早朝、俺は普段よりもかなり早く目が覚めた。くそ……、学校があるときでもこんなに早くは起きないぞ……。そう思いながらも、二度寝する気にはなれないんだよなぁ。妙な夢見たせいで寝る気が起きない。どんな夢だったか覚えてないが、とにかく嫌な夢だった気がする。じゃなきゃ、全身汗まみれで飛び起きるわけがない。いや夏だから汗かくのは仕方ないけど……。とはいえ、もうちょっと寝ないと辛い……かな……? 俺の隣で呑気に寝てる後藤こいつのことだ、昼でも心霊現象が起こる場所に行く、って言い出すに決まってる。

 ……目ぇ閉じてりゃ寝れるかな……? 無理して寝よう! 夢は、もう見ないはずだ! ……多分……、恐らく……、きっと……、てか、見ないことを祈って寝る!


「昨日は不発に終わったけど、今日のは違うッ! 上弦町の神社に行くぞ!」

 朝食後、後藤はこんなことを宣言しやがった。よりにもよってこの町の超危険スポット、あの神社に行くなんて言い出した。こんなことだろうと思ったが、反対せざるをえない! 寿命が縮む!!

「はぁぁぁぁ?! 何言ってんだ後藤!! 俺はぜってー行かねぇぞ!」

「たかが神社だろ? そこまで拒絶する必要があるのか?」

 それは違うぞ衿間。あそこはたかがで済む場所じゃない。妖怪や化け物の巣窟にして、退治屋が居る所だ! とは言ってやれない。何故って、衿間は妖怪馬鹿だ。そんな話をすれば、何が何でも行きたいと言い出すに決まってる。

 だが嫌だと言う俺の意見は、意外な所から却下されることになる。

「神社か、いいんじゃないか? 面白そうだ」

「……え? 堅山先輩、起きてたんですか?」

「おいどういう意味だ、山手。俺が四六時中寝てるとでも?」

「そういうイメージしかなかったです、正直」

 じゃなくて! 今堅山先輩、神社行くって言った?! あんな危険な場所に! 勘弁してくれ、俺はまだ死にたくない!! とはいえ、長浜も行く気満々だし、俺の拒否権はまたも無視された。かくいう俺も、昼間なら大丈夫だろうな、という甘えた考えがあった。だから、超危険スポットに行くことに多少の抵抗の後について行くことにした。最も、これが悲劇の始まりだった……。


 え、なんだこれ。霧が出てるし濃い。これ、二メートル先が見えないんだけど!

「おい後藤、これ大丈夫か?」

「大丈夫大丈夫! さっ行くぞ!」

 あ、おい、先先行くな! 全員はぐれるぞ! ……ところであいつ、神社への行き方分かるのか……? 前回は結美先輩が案内してくれたけど、今回は案内人無しな上に濃い霧が出てる。夜道より迷いやすい状況なんじゃないか……?

 しばらく歩いたが、何処を歩いているのか見当がつかない。それに、車が一切通らない。……おかしい……、いくらなんでもおかしい。

「ねぇゴトーちゃん。道ホントに合ってるの?」

「合ってる筈だよ。目印も何も見えないけど」

「なぁそれ、迷ったって言わないか?」

「そうとも言うな!」

 …………笑い事じゃねぇよ!! 嘘だろ、おい! 町中で迷子とか笑えねぇ! ついでに言うと、人が全く通りかかってくれないから、道を聞くこともできやしない。……あれ? 何で人が通らないんだ? ここ、一応生活道路のはずだろ? 霧が濃いからか? けど、一切通らないって……。

 立ち止まって悶々と考える俺に気付いたのか、堅山先輩が足を止めてこっちを見た。

「山手、どうかしたか?」

「あ、いえ、なんでもないですよ」

「ならいい。……! 山手、危ない!」

 え? 何が、と思う間に、俺は堅山先輩に引っ張られてバランスを崩してた。けど、顔面からアスファルトに叩きつけられることは回避された。堅山先輩がいい感じに引っ張ってくれたおかげだ。そんなこんなで倒れた俺の頭上を、何か鋭いものが通り過ぎていった。って、何が通り過ぎて行ったんだ?!

「堅山先輩、山手、どうしたんだよ?」

「後藤、来るな! あぶねぇ!!」

「何が危ないんですか、堅山先輩!!」

 後藤が叫んでるのが聞こえるが、俺は自分の背後から目が離せない。……なんだよ、あのでけぇカマキリは! あの時見たクモと同じか、それ以上にでかい! もしかして、頭の上を通り過ぎていったのはこいつの……。

「これ、カマキリじゃねぇよ!!!」

 何とか立てた俺は思わず叫んでた。これは不可抗力だ。更に、叫んだせいでカマキリがこっち向いた。ついでに、来るなといわれた三人が来て、全員ぽかんと口を開けてた。特に衿間は、見たがっていた妖怪(?)に遭えたせいか、握り締めた拳を震わせてる。正直言って、この状況でそんな余裕は生まれない。

「何で来たんだよ……。あぶねぇだろうが……」

「いやだって、これは心霊現象ですよ? 来なきゃ損ですよ!!」

 やめろ後藤、そんな余裕無いって言ってるだろ! オカルトマニアなのは結構だが、コマンドは命を大事に、だ!

「おい馬鹿! 何逃がしてやがる!」

「しっかたないだろ! 逃げ足速すぎるんだよ、あの蟷螂とうろう! でも、これで仕留める!」

「そうしろ! 被害がでかくなる!」

 だから、会話してる余裕なんて……て、誰?! 霧の向こうから声がする! 少し低めの男の声と、男にしちゃ高い声が聞こえた。しかも、その声が聞こえたあとすぐに、巨大なカマキリが綺麗に四等分されてた。……なんだろう。これと似たような光景、見たことある気がする……。

 分解されたカマキリの後ろから出てきたのは、赤い天狗顔と黒い鬼面。多分、両方ともお面だ……。身長は二人とも同じくらい。ただ、ちょっと鬼の面の人が高い。二人の服は神社の神主さんがよく着てる、薄水色のズボンみたいな奴に白い着物。……うん、普通に神社でよく見かける人に見える……お面以外。

「あれ……? 人? やば、今の見てた?」

「はい、ばっちりと」

「とうろうって言ってましたけど、あれって妖怪なんですか?! ほかにどんなのが見れるんですか!!」

「えっ、うぇ?!」

 ちょ、どっから飛び出してきた衿間! あの天狗の面の人、変な声出してたぞ! 鬼の面の人は、なんだかどうでも良さそうな雰囲気出してる……。あのカマキリを見られたこと、天狗の人より気にしてないのか?

「はぁ、全く……。ここは危ないから、とっとと家に帰れ」

「いやぁ、そうしたいのは山々なんですけど、旅館への帰り道が分からなくて……」

「旅館? ……このくそ忙しいときに観光客かよ……。勘弁してくれ……、旅館への道なんざしらねぇよ……」

 ……この人口悪っ! ぼそっと言ったこと、全部聞こえたんだけど!!

「あの、今の一体なんですか? 何が忙しいんですか? 今のカマキリって心霊現象の一つですか?!」

「あーー! 矢継ぎ早に質問してくれるな!! まず一つ、さっきのはカマキリだ。二つ、見ての通り。三つ、心霊現象だったらどんなに良かったか……」

 最後の質問の答えだけ、声のトーンが違う……。あれ? もしかしてあのカマキリ、本物……? って俺がその疑問を口に出す前に、横にいる堅山先輩がぽそっと何か言った。それを聞いた二人は、揃って服にお面の顔を押し付けた。何言ったんだ、堅山先輩。

「やっぱ、ここに来る前に結構狩ったから、臭いが染みたかな?」

「元々身体に染み付いた奴じゃねぇか? 血生臭いのは」

「は? え? 血生臭い? もしかして、え?」

「「あ、殺人鬼とかじゃねぇから」」

 はもったって、これのことだよな……、ってしみじみしたいけど、そうも言ってる暇はない。また霧の向こうから、また俺達を狙って何かが飛んできた。でもそれは、何も出来ずにバラバラにされる。バラバラになったのは恐らく、でかいハチじゃないか? よく見えなかったけど。その代わりに見えたのは、鬼の面の人が持ってる、短い刃物。両手に持ってるから恐らく、双剣なんだろうな。……殺人鬼って言われても、疑問もたねぇよ?!

「ちっ、下っ端如きが手ぇ出すな……」

「なぁ。仕方ないから神社に連れていかね? ここにほっといたら、なんか不味いだろうし」

「え? 神社?」

「ん? どうした?」

「いえ、丁度そこに行きたかったんで、良かったぁって思って!」

 後藤がそういった途端、二人は顔を見合わせてため息付いてた。なんか、不味いことでもあったのか? でも、二人が神社に連れて行くって言ったんだし……。俺達には(ある意味)非はない……はず……。

「うわ、やな予感しかしない」

「仕方ないだろ……。まぁ、人数多いし、応援頼んどく。状況説明しとけ」

「人使い荒いな、相変わらず」

 そう言いながらも、天狗の面の人は俺たちの方を振り返り、お面を外してくれた。黒っぽい切れ長の目が印象的な、イケメンだ。その人は人懐っこい笑顔で、俺達にこの町が今置かれている状況について簡単に教えてくれた。

「まぁ、あれだ。原因不明の濃霧で視界が効かない上に、巨大化した昆虫が襲ってくるっていう、誰がどう考えても危険極まりない状況なんだ。だから、ちょっと神社まで来て欲しいってこと」

「全くわかんないですけど、危険だということは分かりました。……ところで、名前を聞いてもいいですか?」

 とりあえず、名前が分からないと呼びようがない。聞いてみたところで、自分から名乗ってない、と慌てた。だがその人は、俺が名前を言う前に口を開かないようジェスチャーしてきた。

「今ここで名前を言うのも、聞くのもやめたほうがいいよ。あとでちゃんと教えるからね」

「連絡ついた。神社に移動する」

「応援は?」

「途中合流」

「了解。じゃ、みんなついて来てくれ。はぐれるなよ?」

 ……勝手に話が進んだ……。ってか、二人だけで話を進めないでくれ! あと鬼の面の人、結局お面外してないし! 素顔見てない人を信じろってか……。

 と、置いてけぼりを食らった俺達だが、助けてくれた人たちを信じて、ついて行く事にした。何が起こるかは、そこで判断しよう……。

あれ……?お兄ちゃん、お面外してない。ウチの子がちゃんと出てない……。まぁ次の話しですかねぇ。二人の登場は。思いの他長くなりすぎましたw

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