表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/42

私の優しい世界達。

子ども同士ですが暴力表現があります。

苦手な方はスルーで。

『お前妾の子なんだろ!』



幼い日、母様に連れられてやってきた屋敷。

おそらく高位の貴族の邸宅だったのだろう。

母親達はお茶会、私は広い庭園でいかにもボンボンな少年少女、幼児達と遊んでいた。

そんななか少し年嵩の少年が私にいきなり近付き言いはなった。



『なんてこというのですか!』



私の側にいた少女が非難する。



『黙れ、格下!

そんな口聞いて言いと思ってるのか!』



少年は少女を突き飛ばす。

少女は近くの花壇に倒れこんだ。

手やスカートが汚れ、少女は涙ぐむ。



『はじめてお会いしますね。

一緒に遊びませんか?』



母様と離れ、兄は別な友人に呼ばれポツンとしてしまった私に声をかけてくれた少女。

なんとなくミチルに似た雰囲気で安心して遊んでいた。それなのに…



『母親にも兄にもにてないじゃないか!

お前だけ別な女の子どもなんだろ!

美人な母親に飽きた父親がメイドにでも産ませた子どもなんだろう!

妾の子!』



当時意味はよく分からなかった妾という言葉だけれど、少年の顔と言いっぷりでものすごく悪口を言われているのが分かった。

そして私だけでなく両親を悪く言われているのも分かった。


そして、

幼い私は躊躇うことなく少年の股間めがけグーパンをし、思わずうずくまる少年の頭をボコスカ叩いた。



『おねーしゃんにあやまれ!』



『このッ…!

格下の分際でッ!』



幼児の拳のダメージなどたかが知れている。

少年はすぐに復活して私の髪を掴むとひっぱたいてきた。

しかしである、

一応貴族令嬢カテゴリに入るといえ田舎育ちの野生児の私は怯まなかった。

髪を掴んだ手におもいっきり噛みついたのである。

少年は悲鳴をあげ、半狂乱になって私を叩いたが、私も負けじとガジガジ噛みついた。



『なにしてるの?』



ドンッと音がして、涼やかな声が響いた。

噛むのをやめて声の主を見れば兄様が麗しい微笑みを張り付けこちらを見下ろしていた。


少年を蹴りどかし、兄様は私を抱き上げた。

そして優しく下ろすと真っ白なハンカチで私の顔や鼻を拭いた。

白に赤がつく。

そこではじめて自分が鼻血を出していることを知った。

興奮状態が覚め、痛みが出てきてワァンと泣き出した。

えぐえぐ泣きながらつっかえつっかえ妾の子と言われたこと、お姉さんをいじめた事を伝えた。


言葉にすると『メカケノコノコうわぁんおねーしゃんどんてやたうわあぁ!』であった。

分からないよ!

しかし兄様は理解してくれたみたいで、分かったと一言いうと、少年の胸ぐらをつかみあげると右ストレートを放った。


少年は再び倒れこんだ。

兄様は笑顔であった。

そのままの表情で少年の髪を掴みあげると言った。



『君は子どもだ。

更生の余地がなくもない。そのような言動をするのは周囲の大人や親のせいだろうね。

僕は君の家を敵と認定する。10年後覚えておけよ。』



少年はぶるぶる震え、見ていた私達もぶるぶる震えた。

当時の私はカッコいい!というぶるぶるだったが今にして思えばうすら寒い。

私が2、3歳の時の記憶だから兄様は12、3歳の時のことだ。




その後、使用人から連絡を受けた母親達が来ててんやわんやの大騒ぎになり、少年はホスト側の子だった事が判明した。

母様は美しすぎる笑みを浮かべ、兄様をひっぱたき共に謝罪したあと言い放った。



『大変申し訳ないのですが今後のお付き合いは考えさせてもらいますわ。

高貴なご子息様に家族が侮辱されても黙っていられない愚息達です。私達もそれを直そうとは思っていませんので。

ごきげんよう。』



馬車に乗ると母様は私と兄様を抱きしめわんわん泣いた。






その日の夜、

私は父様に呼ばれた。

膝に乗せられ頭を撫でられた。



『今日は勇敢だったんだね。』


『にーしゃまかーしゃまとにてにゃいっていった。』


『そうか…

リコリスは女の子だから母親に似なかったのは残念だったかな。

私に似たからねぇ。』


『リコはとーしゃまとおんなじってみんなにこにこしゅる。リコちゅき。』


『私もリコリスが好きだよ。それにね、君の瞳の色は母様と同じなんだよ。

リコリスの目の色を見るたび私達の血を引いてくれた事が嬉しくてならないよ。』


『よくわかんにゃい。』


『ハハハ、うん私はリコリスが大好きって事だよ。』


『リコもとーしゃまだいちゅき!』



私は優しい世界に囲まれていた。

囲いが取れて悪意を向けられても苦しくなっても、優しい世界は側にあったから前を向けたんだね、きっと。




そんなことを思っていたら夢から覚めた。

懐かしい記憶だ。



ちょっと余韻に浸っていたらけたたましく部屋のドアがひらかられて、輝かんばかりの笑顔の男が入ってきた。

兄様である。

今日も絶好調に麗しい。



「産まれたぞ、リコリス!

可愛い可愛い姪っ子の叔母になれたんだぞ!」



時間は早朝である。

そして私は空きっ腹である。


とりあえず私は怒りに任せ枕とスリッパを続けざまに投げつけたのだった。



リコリスのガジガジのイメージはリトルミーのイメージ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ