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どじっ子認定される。

遅くなりました。

「定食三つ下さい。」

「あ、ひとつはパン少な目で。」


ざわざわと騒がしい野外を無視して、祖父と幼馴染みが食堂で平然と注文をするのをテーブルにへばりついてルーヴィルは眺めた。

二人に引きずられ、それだけで疲れ果ててしまった。

ここはアゲートの城に仕える使用人や騎士、文官が利用するいわゆる社員食堂である。

ちなみに貴族専用は別にあるそうだ。

もちろんルーヴィルは庶民派の食堂に来ている。

というか連れて来られた。



「え?米もあるの?

じゃ、俺は米を大盛りで!」


「料金はいくらになるかね?

おお!良心的な価格じゃな!レグちゃん、ここはお祖父ちゃんがおごってやろう、感謝せい。」


「もっと高いの頼めばよかったな~(笑)、メイじいちゃんあざーっす!」


ひたすらノリノリな二人である。

ルーヴィルはなんとか息を整え姿勢を正した。

ノリと勢いでここまで来てしまったが一応は国の代表なのだ。


一応。


外行き用の人を食ったような笑みを浮かべ二人を待つ。

その笑みは仮面だ。

父に顔立ちも、魔力も武力も無い事も似たルーヴィルはおまけに体も弱かった。

何もないのをよく理解しているからこそ、何かあるようにみせる。死ぬ気で努力しても、それを気取らないようにする。

そうして今の地位まで這い上がったルーヴィルはけっこうな可愛い系のハイスペック青年であった。




「…ここで何をなさっているのですか。」

よそ行き用の仮面をつけた三人が黙々と食事をしていると後ろから声がかかる。


「空腹に耐えられず食事中です。

ああ、もちろん代金は払っておりますよ。ほら貴方の国の某領主様いわく粗野で戦うことしか脳の無い私達ですから、ね。

この国の貴族様が食べるような高貴な食事は出す価値もないとの判断されたのか何も用意されなかったので食堂に来ました。

ここの料理人の腕は良いですね。

我が国でも十分店が出せる。」


振り返りもせず、食事の手を止めることなく一気に言い切るルーヴィルの声は静まり返った食堂に響き渡る。

後ろにいるのは王太子の美形の近衛騎士団長だろうと声で判断した。

嫌味な言い方だがはじめに口を滑らしたのはアゲートのバカ領主なのだ。

相手の言質を取る事は外交では基本。


押し黙る気配に別の人物が割って入った。


「団長!また服汚したってどういうことですかっ!!!!」


その声に後ろを振り返ったルーヴィルは一瞬ポカンとしかけて表情をなんとか取り繕った。


王太子の近衛騎士団長がキラキラしく立っていた。

が、式典用の白の服には真っ赤なソースの染みとおそらく葡萄酒だが葡萄ジュースだかの液体が染み込んでいる。

真っ白な式典用の礼服が台無しである。

白は美しいが染み抜きは大変なのだ。

ゲオルグは武力特化のそこつ者が多いのでこぼしてもはねらせても分からないよう黒や深紅、群青や深緑などの式典用の衣装が多く、それは文官でも同じ。

城仕えの制服は基本黒。それは戦略的なものの理由もあるが、粗相しても分かりにくい、というどうしょうもない理由もある。


対してアゲートは白が制服や式典用の衣装に使われることが多い。

余談だが染み抜き技術は大陸一だったりする。


そんな技術をもってしても修復は困難そうな染み。

どうしたらそんなことになるんだ。


「毎回毎回食事の時は着替えろって言ってますよね!

いい加減ご実家にまた汚して駄目にしましたって報告するのたくさんですよ!」


固まる近衛騎士団長。

無表情だが、『うわっ、どうしよう。オロオロ』感が滲み出ている。美形なのに残念だ。

ミチルさんに叱られるゼノンさんに似てるなぁとちょっと思ったルーヴィルであった。

怒れる声の主はこちらを見てハッとした顔をした。

王太子が来たときに居たからおそらく近衛騎士一人だろう。騎士団長にぐいぐい意見を言える感じから副官か何かだろう。


「ゲオルグの使者の皆様…お見苦しいところをお見せしました。」


染みだらけ近衛騎士団長とルーヴィルの間にさっと割って入りさりげなく団長を隠し、深々と頭を下げる副官(仮)。


「お気になさらず。

それよりメイズ殿、アレをしてあげて下さい。」


祖父は『おじいちゃん、お願いッ★』と言って欲しそうな顔をしたしたが、厳かにうなずくと宙に魔方陣を描きアレを発動させる。

どうでもいいがホークの先に肉を差したままふるのはいかがなものなんだろうか。



シャラララララン★



なにやらファンシーな音がしたかと思えば近衛騎士団長の姿が光に包まれ…









驚きの白さの式典用の衣装を着た近衛騎士団長となった!




『なっ…!!!??』



ゲオルグ三人組以外の驚愕の声が響き渡る。

衣服の汚れを取り去る魔術。

これは淡い色の装飾や衣装が好きで似あうのに、よく食べこぼしたり垂らしたり染み作ったりするどじっ子祖母の為に開発した祖父の愛の魔術。

かなりの魔力量を必要としかなりの集中力を必要とするため術式が公開されているにも関わらず使う人間がいない、残念な術。


通称どじっ子救済魔術。


「はぁ、彼見てたらわしのエーリに会いたくてたまらなくなってきたなぁ。

でも仕事中だから可愛いルー坊で我慢しよう。」


だから感謝を込めて抱きついてこいという視線を無視してルーヴィルは思った。


近衛騎士団長は綺麗な顔して戦闘力も高いが、どじっ子で残念な美形だなと。

近衛騎士団長はトマトソースとチーズが入った揚げ菓子と葡萄ジュースで休憩中、揚げ菓子食べた瞬間ソースが飛び出し、ひゃっ!てなった勢いで葡萄ジュースをこぼしました。

ヤバイ、拭かなきゃと思ったところにルーヴィル達を見つけたのでした。

レグルスは(ルーヴィル幼馴染みの騎士)、その姿を見て大爆笑しないようにぷるぷる中です。

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