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目を覚ませば別世界。

「起きて、リコリス。私の可愛い子リスちゃん。」


ゆっさゅっさ揺り起こされ目を開けると、額がふれ合わんばかりに近い母様の顔があった。


うぁあぁあ!

目が!目がぁぁぁ!

と、叫びだしたいくらいの美しさに目が眩む。

そうして私は瞳を閉じ…


「二度寝禁止。」


ベシリと美しい扇で叩かれ美しい微笑みを浮かべた母様が宣言するので、私はしぶしぶ起き上がる。

あっ、よだれ…寝巻きの袖でこっそりぬぐい周囲を見回し固まった。


きらきらふりふり可愛いものと美しいものに囲まれた部屋は見覚えない部屋だった。

ぶりぶりな可愛さだがセンスの良さでくどくない仕様の部屋。

こんな部屋見たことある。

というかここは…


「リコリスようこそ私の手掛けたサロンへ。

城での夜会でモテモテにさせてみせましょうっ!

可愛いは造れる!」


高らかに宣言した母様。

これはあれですね、着せ替え人形コースですね。

帰りたい、ごろごろ寝くさりたい。

起床わずか3分で私の機嫌は低下したのでした。



☆☆☆



私の母様は国内外にその名を轟かすとある商人なのだ。

服や装飾品がメインだけれど人材派遣や育成、食品や医療品なども扱っている。扱っていないのは武器のみ。

元々私の祖父に当たる人は武器商人として豪商に登り詰めたらしい。

会ったこともないので話だけしか知らない。

美しく賢い母様は妾の子であったが育ての親の祖母に大変可愛がられ、同時に厳しくも教育されたそうな。

年頃になると縁談が雨のように降り注ぎ、贈り物がひっきりなしに来たそうだ。

祖父は母様を王族にもしくは身分の高い貴族に嫁がせようとしていたらしい。

しかしながら母様は父様を選び、二人は駆け落ち婚をした。

母様は武器以外で商いをして成り上がると誓い、バリバリ働いた。平和な時代が訪れたという時期もよかった。

貴族だけでなく平民でも手が届く美しく可愛い服や小物、雑貨、化粧品。

それらを手掛け瞬く間に知る人ぞ知る商人の一人となった母様は美容サロンも国内外にオープン。

可愛いは造れる!を謳い文句にザクザク稼ぎ、劇的ビフォーアフターで世の貴婦人や乙女達に夢と自信を与えている。




そんなサロンへ私は来た。

というか目覚めたらサロンだった。

可愛いは造れる!かもしれないけどルアと並べば霞むからね…

いまいち着飾る事に積極的じゃない私にはサロンは退屈なのだ。


さぁどんなコースに仕様かしらっ!とはしゃぐ母様と店員さん達を生ぬるい目で眺めて私は思った。




お腹が空きすぎて気持ち悪い、と。



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