幕間―外務大臣は彼を語る―
俺の親友は、大変温厚で信頼も厚く、老若男女とわず好かれる奴だ。
これといって特徴のない普通の顔立ちだが、その場に居るだけで場が和やかになる不思議な奴。
聖人みたいに思われがちだが、近くにいれば意外とこずるい所や大雑把な所も見えてきたりするが、
概ね良い奴だ。
あれだ、女たらしでなく人たらしというやつだ。
女には、間違いなく俺の方がもてる。
自慢にしかならないが、俺は昔は天使のような美少年。青年期は神がかった美形。現在は渋味のでてきた美中年なのだよ。
今も亡き妻一筋であるが、一夜の夢を求めて少女から熟女まで口説かれたり迫られたりする位にはもてる。
心と体は別なので、据え膳はいただくがな。
アイツと比べては娘に不潔だとなじられたこともあった。
まぁ、仕方がない。
年頃の娘は難しいものだ。
親友には妻と二人の子どもと孫が三人いるが、
アイツと娘、息子の嫁以外は輝くような美形だ。
かといって彼らが不細工というわけではない。
奴の娘と息子嫁は、俺から見ても一般的にも可愛らしい部類だ。周りがすごすぎるというだけで。
親友も、その娘も人間離れした美形に囲まれているにもかかわらず、変にコンプレックスを持つこともなく、そういうものとして受け止めている。
それは一見簡単でも、実は難しいものだ。
どうしたって人は比べたがる。
本人達なりに葛藤はあったろうが、それを周りに悟らせないだけの器のでかさがあるのだろう。
俺と親友は一見、水と油のように見えるだろうが共通する所もある。
少しばかり腹黒で、目的のためなら手段を選ばない所。
考えても見ろ。
外見的に惹き付けるもののない、ただのお人好しが『人たらし』になどなれると思うか?
お人好しは便利な人間にされやすいというのに。
見た目に騙されているのかもしれないがな、アイツは俺が認めるほど優秀だ。
そして、別名人材ホイホイともいう。
親友はなかなか目がきく。おまけに好かれやすい。
天才だろうと凡才だろうと、何かしら引き出し伸ばし、その後ろに隠れるのがうまい。
そんな立回りができる奴なんだ。
そんな人間の大切なモノをお粗末なやり方で得られると思ったのか?
そもそもそれが間違いだというんだ。
俺でさえ、
娘の相手が王子でも、どんなに二人が好き合っていても面白くないんだ。
アイツの心情を思うと、居たたまれないし殺意がわくなぁ。
さぁ、どうする?近衛騎士団長。
謝るならさっさと言った方が身のためだと思うがね。
さすがの俺も、親友が翌日には国外に出ているとは思いもよらなかった。
やはり面白い。俺の親友だけある。
主人公の親友の父は、外務大臣。