裏側で。
連続投稿。
ゼノン様がいきなり通信を繋いだ食堂を出て、
私達は中央広場のベンチに腰掛け街で話題のオムレットという菓子を食べていた。
ふわふわのケーキ生地にクリームと数種類のベリーが挟まり、とても美味しい。
幸せ~!休日出勤万歳!!
そんなことを思っていたら、空から降る声。
流れる映像。
ゲオルグでは、他国と合同や自国内での模擬戦闘を流す事はよくある事だった。
けれど、今回はゼノン様対大勢の戦闘。
一般に公開するなど初めてだ。
内々でなら、よく制限つきで(ゼノン様の方に)模擬戦が行われ、こてんぱんにのされる事はよくある事だけど。
ゼノン様の戦い方はえげつなく、容赦もない。
本人も周りも分かっているからこそ、今までなされなかった。
相手は友好国のアゲート王国。
そんな国に、ゼノン様の恐ろしさを知らしめて関係にヒビが入ってしまわないのだろうか。
「ミーシャちゃん。送って。」
凄惨な戦闘から目が離せなくなっていた私の方を、ミチルさんが叩いた。
一瞬、びくりと体が跳ねた。
ミチルさんは困った顔をして、ちょっと微笑んだ。
私は転移の術が上手く使いこなせない見習い生だけど、ひとつだけ得意なことがある。
繋げることだ。
繋がる道を作り、必ず目的地に行けるようにすること。
別に大したことではないように思うかもしれないが、この必ず目的地に行けるという事は重要なのだ。
例えば家に帰るのに術を使ったとする。
確実に繋げなければ、屋根の上や、下手すると地中に転送されてしまうことがあったりするのだ。
屋根はなんとかなるとして、地中に行っては死の危険性もある。
ミチルさんはゼノン様の妻だけあって、けっこう狙われたりすることが以前かなりあった。
その為、万が一にはゼノン様の元へ送られるよう私は徹底的に鍛えられ、また道を繋げるだけでミチルさんはあの方のすぐ側に送る術が編み出された。
だから、私には魔力的負担はかからないで送れる。
例え、そこが他国の結界に守られた中だとしても。
ゼノン様にその魔力があれば。
「お願い…
大丈夫。すぐ戻るわ。」
あんな場所に、ミチルさんを送りたくない。
戦いや争いとは無縁の場所でいつだって笑っていてほしいのに。
「すぐですよ。
だって次はフルーツジュース飲むって言ったじゃないですか。」
「食いしん坊ね。ええ、約束は守るわ。」
私が意識を集中させて、ミチルさんの手を取ると、彼女の姿はかき消えた。
ミーシャちゃんはミチルになついてます。
お姉さんみたいな。




