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いきなりの戦闘。

『皆様、只今より我らがゲオルグの守護神!救国の英雄こと魔術師ゼノン殿と、

アゲート王国の精鋭騎士団と宮廷魔術師有志との模擬戦闘があります!

この勝敗により我が国ゲオルグとアゲート王国の国境領地での不当通行料請求問題が片付きます!』


晴れやかな男の声が上空から降り注ぐ。

そう、上空から。

空はスクリーンと化していた。


黒を纏う魔術師ゼノンを囲む緊張した面持ちの騎士団員達と魔術師達。


馬鹿なことを…


ため息が漏れる。

勝敗など目に見えているだろう。

穏便に納めるすべなどゲオルグもアゲートも持っているだろうに。


これは警告だ。

平和を謳歌しすぎてボケてしまったアゲートの愚か者達への。


『模擬戦闘なのでルールは簡単。

殺さないこと。まぁもっともこれはゼノン殿のハンデみたいなものです。

アゲート王国の勇猛なる騎士の方々は殺す気でいってください!魔術師の方々も一撃必殺級の魔術を使用して構いません。

じゃないと、数秒で沈められますよ!

制限時間は15分。

なお、模擬戦闘をする鍛練所は結界が張られていますので、中が火の海になろうと槍が降ろうと影響はありません。』


楽しそうな明るい声は、物騒な言葉を紡ぐ。


『それでは、スタート60秒前―…』







***



「不粋ね。貴方の親友がいながらこの様なんて。」


「あえてだと思うよ。

例の領主と、あと勘違い貴族を黙らせるためにも必要だったんだろうね。

王子の結婚前で浮き足立つだけじゃなく、物騒な事を考えている人間もいるし、どこか気が抜けている警備隊制の強化とか…ね。

まぁガス抜きだね。」


仲良く腕を組歩く私達は、もう空を見ない。

結果が分かりきっているから。


「しかし、ミチルには酷な映像だね。」


ポツリとユーリが呟いた。

ある日突然庭先に現れたミチルは私達家族にとってかけがえのない大事な人間の一人だ。

それはメイド長の養女になろうと、陰険美形魔術師の元に嫁いでからも変わらない。

愛しい娘がある意味まっすぐ、世間的にやや斜め上をいく楽しい性格になったのは彼女のおかげ。

私や息子との美貌の差に頓着せず、美貌に振り回されないのはミチルがいたからでもあると思う。


あの子は、可愛らしく庇護欲をそそる外見とは裏腹に、案外肝が太い。


『始まりはどうであれ、私はあの人の手を取って歩く事を自分で決めたから、乗り越えていきます。』


以前、家出という建前の里帰りをしてきたミチルはそう言って笑っていた。

それに…


「大丈夫よ、ユーリ。」


私はにっこり微笑んで愛する夫を見た。


「女の子は弱いけれど、母は強いの。」





***



空から降り注ぐ爆音、雄叫び、轟音、悲鳴。


ポカンとその映像を見上げる。

なかなか激しい映像だ。

普通の貴族令嬢ならば卒倒するような映像。

人が吹っ飛ぶだけでなく、血飛沫さえどぶ。


「リコさん、見ない方が…」


ミーシャちゃんが私を気遣うが、私は大丈夫だと返した。

規模が大きいだけで、私は似たようなモノを間近で見た事がある。

腕比べやその実力と美貌に恐れをなし亡き者にしようと企む悪い大人(ノンノン談)にノンノンと遊びに行った先で襲われることもあった。

まさか宮廷魔術師の地位にあったとは知らなかったが、その辺も絡んでいたと思う。

『美形過ぎるのも困り者だな』と本人はケロリとしていたし、幼い私はそんなものか。美形過ぎるのは大変だなぁ。と暢気に信じていた。

倒した相手はきれいに治療し、どこかに転送されてたっけ。

幼い時は訳がわからなかったが、成長した今となっては事情も飲み込める。

そのあと決まって遊びに行った先の美味しいものを与えられてたのもあり一時の恐怖などどこかに行ってしまった私。

やはり食欲には弱いのか。


「私の、一応だんなさま?みたいな人もあそこにいるから見ておこうと思って。」


降り注ぐ炎の矢を目にもとまらぬ速さで剣で散らし、部下達にげきをとばす近衛騎士団長を目か追う。


開始五分ですでに三分の一が倒れている。

その中には顔見知りの兵士さんもいる。


終わればノンノンが回復してくれると分かっていても何だか辛い。

見知らぬ誰か傷付くより知り合いが傷付く方が悲しい事が何だか申し訳なくもあった。


アゲート王国は百年以上、戦争を起こしていないけど何があるかわからない世だ。

私が名声も実力もある美形の騎士団長と残念な誓いの儀式をする珍事があるように、

戦争になる凶事も起こらないとは限らない。


知らず知らず、私の手は祈るように組まれていた。




ノンノンは心配無いけど、近衛騎士団長は何だか心配なのだ。

理由はわからない。

ざわざわする心を落ち着かせながら、私は映像を見上げ続ける。


このざわめきが何か、私はまだ知らない。



命さえあれば、足や手がもげようか吹っ飛ぼうが、体に穴があこうが回復させてしまえるゼノンは規格外。


なるべく殺傷沙汰の現場はミチルが見せないよう努力しましたが、見えてしまうこともある。


リコリスの性格が性格なのでトラウマにはならなかっただけ。


親友がリコリスをいじめたりなじる人間を暴力的に攻撃してもあまり動じませんでした。

ほどほどに、と暢気に宥める→嫌いにならないでと泣きつかれる→それを見た相手が逆上すれば最初に戻るループでした。そんな設定。


作者はまともに生爪剥がれたのも見れないチキンなので、現実のグロや暴力はダメ、絶対。活字だと書いたり読めたりするのにね。

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