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憧れの人は突然に。

近衛騎士団長サイドの話。

庭師は語る。の後の話です。

「団長、どこに行ってたんですか!」


彼女の屋敷からずぶ濡れで城に帰って来たら、血相を変えた副団長が走って来た。

いつも穏やかなのが珍しい。


彼女の父、ユーリス殿の屋敷に行ったら落とし穴にはまり、帰って来たと伝えると、物凄く微妙な顔をされた。


「ずいぶんな歓迎を受けたんですね。

まぁ、刺されなくて良かったですね。その様子だと話もできなかったんですね。」


あんまりな言い方とも思うが彼女との誓いの儀式の話はすでにしてあるので、無理もないかもしれない。


「不幸に酔ってないで周りを見ろと屋敷のメイドに言われた。」


「そりゃあ的を得た表現ですね。

本当に貴方はこうと決めたら、周りに目が行きにくい。」


副団長は自分に対して、身分や家柄に拘らず歯に衣きせぬ言い方をするのが好ましいとも思っていたのだが、時として大変きつい。

傷口に塩を塗り込まれ踏みつけられているようだ。


「なに痛いとこつかれたみたいな顔してるんですか、相手方の方がよっぽど痛いし悲しいですよ。

ともかく、服を着替えてきてください。5分で。」


立場上こちらが上と言うことを感じさせない言いぐさだ。

だが逆らうと面倒なことを理解してるので、ダッシュで着替えに向かうのだった。











「ゲオルグからの使者?」


必死で五分で戻ると、副団長が説明をし始めた。


「ええ。

国境の領主がゲオルグに出入りするものから不当に通行料を取り立てたそうで。

領主は反省しない上、たかだか30年前の戦をおさめた位の小国が我が国に楯突くとはなんだと言い泥沼化。

頭おかしい領主と話しても通じないと言うことで、昨夜遅く会談の申込みがあり急遽国王級会談が持たれることとなったのです。」


思わず頭を抱えたくなるような話であった。

ゲオルグは大戦をおさめた後は、兵を持たない、あるいは弱体化してしまった国々に兵を派遣し紛争や内乱を押さえるだけでなく、農業や産業の技術提供までし国が機能するよう助けている。

傭兵国家が始まりとはいえ、無益な争いを好まず、この大陸で平和を一番に考える国家といえよう。


対して、我が国は前の大戦で戦火は及ばず、難民の受け入れでやや混乱した程度。

ゲオルグと共に救済活動に他国へ出向いたり、援助を積極的にしたものも大勢いたが、

関わらなかった者や戦後世代の中には、どこかしら、平和ボケしたり対岸の火事と思うやからもいないわけではない。


他国より信頼されているゲオルグを敵にまわすという事は、大陸内で孤立化する事と等しい。


「なんだって馬鹿な事を言う奴が領主に…?」


「最近代替わりしたんですが、駄目みたいですね。

前の領主はそれはそれは良い方でしたが。」


会談には主も参加すると言うことで、自分が探されていたようだ。


「麗しき王子と顔も良くて実力もある団長がいると見映えがするんですよ。

せいぜい頑張って下さいね。

あ、もしオッケーかでたら問題の領主、スパーンと殺っちゃって下さい。」


副団長…領主に何が恨みでもあるのか…?

にこにこ笑って言うことではないぞ。










「戦争でもしたいんですか?あなた方は。」


のっけから、爆弾が投下された。

ゲオルグの使者は年若い男性だった。

にこにこしながら、恐ろしい事を言う。

その後ろには、魔術師と百戦錬磨を絵にかいたような兵士がいる。手合わせしてほしい。


「小国が我が国になにを言う!

だいたい他国が私の領地に対してものを言うのがおかしい!」


ぎゃんぎゃんと喚く問題の領主は小太りで、ギラギラ目にいたい派手な服にこれでもかというくらい派手な装飾の指輪が全ての指についている。

あ、こいつ通行料全て横領しやがったな、とその姿が語っている。

悪いことをしても、隠したり内密に出来ずしらを切りとおせずに自滅するパターンの人間のようだ。

そんな人間に自国が危機に落とされようとは腹ただしい。

副団長が殺って下さい。といった意味が少し分かった気がする。


「まさかこの様なことになっているとは我々も大変遺憾です。

早急に対処いたします。

盟友のゲオルグに対してこのような仕打ち、自国民といえど…いや、自国民だからこそ許すことはできません!」


外務大臣が前に出て、ゲオルグの使者に謝罪の言葉をのべる。

誠実そうな態度や眼差しだが 、彼が腹黒なのは知っている。


「諸々の詳しい話はゲオルグの国王陛下を交えて話したいので、日程調整を…」

「その必要はありません。

今来ますから。」


外務大臣の話を遮り、使者の男が言う。

ニヤリと笑ったその時、なにかが軋む耳障りな音がした。

窓の外が光る。

かけより見ると、中庭に魔方陣がいくつも浮かび、ひときわ激しく発光し一瞬目が眩む。


皆が再び中庭を見た時、そこには二人の人間が立っていた。


一人はゲオルグの国王のシュバルツ陛下。

もう一人は…


「嘘だろ、真紅の月だ…」


青銀の髪をたなびかせ、黒のずくめの神がかった美しさを持つ男がいた。


真紅の月こと魔術師ゼノン。


憧れの人がそこにいた。




とりあえず切りのいいところでアップします。

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