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のろけというか恐怖体験。

父様に言われてトランクにある手紙を読んでいった。

手紙はトリトからだけでなく他の二人の甥っ子、姉様や兄様、それにチルチル…ミチルからもきていた。


ミチルは、ちょっと変わった生い立ちの人だ。

いわゆる異世界人らしい。

詳しくは知らないけど、死んでしまう直前にこの世界に来たんだと以前ノンノンに聞いた。

まだ6歳の時だったという。

言葉もなにも分からない、知り合いも誰もいない地に来てしまったミチルを思うと胸が痛くなる。

私が産まれて子守りをするようになってから、よく笑うようになったという。

私は、いつだって優しくて笑顔の似合うミチルしか知らないから不思議な感じだ。

そんなミチルが、唯一微笑みかけない、ほぼ話さない相手がノンノンだったから、まさか結婚するなんて思いもよらなかった。


あ、そういえば相思相愛で結ばれたというよりはノンノンのごり押し半強制でゴールインしたような…?


チルチル…昔も今も大変ね…

何だか今の私の状況と何だか似てる…?


ちょっとだけ黄昏ていたら、朝食に呼ばれた。

食べて寝ての生活でもお腹は減るもので、私はウキウキ朝食を食べにむかった。








「カトレア、胸元もう少しとめないと。」

「うまくできないのよ。」

「仕方がない人だなぁ…」

応接 に用意された朝食食の前で、父様が母様のブラウスのボタンやらリボンやらをとめたり結んであげていた。

母様、自分でできるじゃん。

わざとなんですか、わざとなんですね。

時々、ああして甘えるんですよね。母様は。

父様も分かってるのにやってあげるあたり、ほんと熱々夫婦ですよ、まったく。

そんな二人を間近で見すぎていたから、変に冷めてしまったのかもしれない。

まぁ、羨ましくもありますけど…

近衛騎士団長とあの二人のような事ができるか?否だ。

はたから見たときの絵図らを想像してみてほしい。

キラキラ美形に服を直される、私。

何様?!ってなりますよね。

逆に、私が直してやるとすれば、ただの主人と使用人の図だ。

まぁ、直してといわれても自分でしろよと突っぱねてしまう自信ありますね。

甘い雰囲気にはなれないのか、私は。


ぐるぐる考え込みつつもしっかり食べた朝食はとても美味しかった。

連日、美味しいものばかり食べ過ぎて太らないか心配だ。





食後のお茶を飲んでいるとノンノンが迎えに来た。

ノンノンに連れられて、ノンノンの屋敷にむかう。


「シュバルツに呼び出しされててな、俺は日中いないがのんびり過ごしてくれ。

ただし俺のミチルを困らせないように。」

「大丈夫です。一番困らせてるのはノンノンだと思うから!

俺のミチルって何様ですか。むしろ私のチルチルです。」

「旦那さまだこのやろう。」


そんな会話をしているうちに馬車は屋敷についた。

チルチルが玄関で手を振っている。


私は馬車から駈け降りると、チルチルに抱き付こうとして、おもいっきり頭をつかまれた。

ノンノンだった。

昨日の髪の毛の怨みなのか、そうなのか。


「見ろ!ミチルの腹を!」


何だか怒ってノンノンが言う。

逆ギレかよと内心思いつつチルチルを見れば…


「に…妊婦?!」


お腹が膨らんでいた。

私はノンノンの鳩尾に肘鉄を決めて、チルチルに駆け寄った。

背後で呻き声が聞こえたが気にしない。


「だから父様の誕生会に来れなかったんだね!

チルチルおめでとう!そして久しぶり!」


軽く抱きしめると、チルチルはふんわり笑った。


「リコちゃん久しぶり。

ユーリさんの誕生会の時はつわりがひどくて、ごめんなさいね。

リコちゃんには直接言いたかったから皆に黙っていてもらったの。」


黒髪をゆるく編んだ髪を結ぶリボンは以前私がプレゼントしたものだ。

チルチルは、私にとって母のような姉のような特別な存在だった。

両親や兄様からはたくさん愛情をかけてもらってきたけれど、皆忙しい。

どんな時も、側に居てくれたのはチルチルだった。

ノンノンと結婚する時は、悲しくて悲しくてノンノンに蹴りやらパンチやらをお見舞いしたんだっけ。


思い出したら、腹立ってきた。ノンノンに。


「ゼノン様、そろそろ登城のお時間です。」


ノンノンの屋敷の執事さんが声をかける。


「いってらっしゃい。」


チルチルは清々しい笑顔で手を振る。


「ミチル、いってらっしゃいのキスは。」


ノンノンが戯言を抜かしてるのは、ひきつり笑顔のチルチルをみて悟った。


「いいからはよ行け。稼いでこい。」

「ミチルは恥ずかしがりだなぁ。」


会話が噛み合ってません、二人とも。


ジリジリと後ずさるチルチル。

じわじわと距離をつめるノンノン。


チルチルがダッシュしようとしたとたん、転移の術で回り込んだノンノンが抱き止め、熱烈なキスをかました。




ノンノンが朗らかに登城していった後にはへたりこむチルチルと唖然とする私が残された。



「ミチル様、そろそろ慣れるか観念すればいいと思います。」


執事さんの一言に、私は更に唖然とした。


こんな調子が毎日なんて、チルチルかわいそう。


母より美人なゼノンの隣に立つのは大変だろうと思うリコリスでした。


ミチルも可愛い人なんですが、ゼノンと並ぶと女神と子うさぎぐらいの開きがある。

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