#3 能力
『あなたの能力は 自分の力を操作できる能力 です。』
能力?自分の力を操作?頭の中が疑問で埋まる。『あなたの能力は』なんていわれても唐突すぎる。
「は~~、これはまた面白い能力だな~おいアラン!どう思うよ!」
「本人の意志次第だな。俺がどうこう言える話じゃない。最低でも上層部に留まれるだけの能力はあると思うが?」
「そうだな。コイツの意志が弱けりゃ能力は発揮しない。」
話についていけない。いつも俺のことはスルーか。
「あの~能力って…?」
刀刃に聴くがアランとの会話を邪魔されたのが癪に障ったのか顔が険しくなった。え?俺が悪いの?
「お前能力も知らねぇのかよ…」
呆れたように刀刃は俺の顔を見る。いや知らねえよ!話して1時間も経ってないのに能力のことなんて知るわけないじゃないか!
「要するに、アランが高速移動できる。これが能力だ。releaseには能力者がほとんどだ。簡単に言うとな。」
「え、その能力を行使するには条件かなにかあるのか?」
「己の意志だ。」
「…意志?」
てっきり何かを犠牲にすることによって能力を行使することができるものだと思っていたが、意志という物理的に存在しないものが行使条件でいいのか。
「強い意志ほど能力の力は増す。逆に弱い意志での能力行使はまともに力は発揮しない。能力が完全に発揮できないっていうケースもあるようだなぁ。」
まるで自分には関係が無いかの言いようだった。
「あとは、どのような形で能力を発動したいかという己のイメージ、創造力とでもいうのかな。」
意味不明だ。なんだ創造力って。
「どういうことだ?簡潔に頼む。」
「例えて言うとオマエの能力が『火を操る能力』だとしよう。どうやって火を出す?」
「それは…手から火を出す…かな。火炎放射器みたいに?」
「この場合、放射じゃなくても良いってことだ。火を球にして出してもいいし、ハートや星の形にしても問題ない。」
「能力の行使はワンパターンじゃないってことか?」
「そういうこと。ま、実戦してみるのが一番なんだけどねぇ~……アラン?」
いきなり話を振ったのでアランは肩をビクッと揺らす。
「なんでいきなり俺に話を…って、まさか……」
この流れは俺の指導係をアランに任せるって感じだ。丁重にお断りしようそうなったら。俺の身が持たない。
「その通りだアラン。オマエに如月の指導係としてがんば」
「断る!」
「なんでお前が断ってんだ!」
予想的中。勘弁してください。死んじゃいます俺。
「で、アランどうする?オマエに頼みたいんだが。」
「……別にいいよ俺は。」
異世界に来て1日も経たず俺の運命はこいつに委ねられたようだ。すなわち死だ。
「えぇ……」
「なんで残念そうな顔をするんだ?もっと嬉しそうにしろって!」
刀刃はそう言いながら俺の背中をバシバシ叩いてくる。
「なんてったってアランに鍛えてもらえるんだぜ?アランが指導してきた奴らは全員有望になって帰ってきたんだからな。」
「へぇ、そうなんだ。」
「ま、その大半の奴らが死ぬ思いをしたって言ってたっけ。」
今、俺の顔は恐怖で歪んでいるだろう。俺に構わず刀刃は喋っている。
「そんな大先輩に指導してもらえるとは幸せ者だな如月は!あと指導されて帰ってきた奴の中にはどんな恐怖体験をしてきたんだろうな。二日間口もきけない状態だったよ。ふふ…面白い話だろ?……ってどこに行くんだ?」
刀刃に背を向け全力で逃亡を図るが手を掴まれる。嫌だ!こんなところで死にたくない!
「手を離せぇぇ!!死にたくない!死にたくない!」
「あー、落ち着け!少し脅しただけで大袈裟なんだよオマエ!つーか凄い力だな!」
「え…そんなに俺の指導が嫌なのか…」
アランはショックを受けているようだ。が、関係ない。あともう少しで…もう少しで扉だ!ドアノブが手に触れるか否か。その瞬間、扉が静かに開いた。
その先には―――――




