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どうして?

作者: 熊ノ翁

 遥か昔。

 人類は石器を握りしめ、火の輝きに集い、獣の影を追いかけて命を繋いだ。

 彼らはやがて土を耕し始めた。

 種を蒔き、収穫の喜びを知った。


 蒸気の力で機械を動かし、電気の光で夜を照らし、核の炎で世界を変えるほどのエネルギーを手に入れた。

 人類の築いた文明は巨大地震や洪水等の大災害、血塗れの世界大戦といった歴史の暴風に翻弄されながらも、決して折れることなく科学の翼を広げて前進を続けた。


 馬の蹄が土埃を巻き上げ、木造りの車輪を軋ませてあぜ道を走る時代から、鉄の馬たる自動車が高速道路を疾駆する時代へ。

 空を駆ける飛行機が大陸を結び、鳥と共に飛び回り、ジェットエンジンの咆哮が国境を跨いで響き渡った。


 やがて人類は、重力の鎖までも断ち切った。

 銀色のロケットが月面に足跡を刻み、旗を立てた。

 国際宇宙ステーションを軌道に浮かべ、流星に混じり空に輝く人工衛星の群れが、地球を取り巻いた。


 インターネットの糸が世界中に網を張った。

 人々の距離は縮まり、異なる国の者であっても隣人に話しかける気やすさで声をかけられるようになった。

 スマートフォンが誕生した。

 かつて宇宙へ行く時に使われていた壁一面を覆い尽くすほどの量のコンピュータが、手のひらサイズにまで小型化した。

 指先一つであらゆる知識を呼び出し、遠くの友と顔を合わせ、仮想の現実が本物の世界を凌駕するようになった。


 医療技術も飛躍的に発展した。

 義手や義足は、ただ見た目をつくろうだけの物ではなく、実際の手や足としての機能を備えるようになっていった。

 神経や筋肉に電極を埋め込み、指先まで動かすことの可能な義手も出来た。

 自身の弱く病変した臓器を捨て、他者の健康な臓器と移し替える事すら可能となった。


 プログラム自身に思考をさせる人工知能、いわゆるAI技術も発達した。

 人類は、伴侶たる種族を自らの手で生み出す足がかりを築いていた。


 西暦2073年。後の宇宙歴元年。

 この年は人類にとって重要な歴史の転換点となる。

 人類は、他の星へと住居を移す事に成功した。

 高性能AIを搭載した様々な用途のヒューマノイドを使い、火星の開拓を成功させたのだ。


 次いで、人類自身も入植を果たした。

 厳しい火星の環境に適応するよう遺伝子改変のされた者、体を金属やセラミックといった義体で覆ったサイボーグ。

 人は自らの体を機械化させ、遺伝子コードを書き換え、火星という環境の下での活動を可能とした。

 火星に初めて人が居住し、プラチナ、ニッケル等の資源採掘もスタートした。

 ちっぽけな地球で、限りある資源をどう節約して切り崩すか。

 そんな考えは時代遅れの物となった。

 宇宙開拓の時代のまくあけである。


 宇宙歴100年を超える頃、新たな時代の到来に合わせて人類に大きな変化があった。

 性差の廃棄である。

 既に人工子宮システムの開発は成功していたが、ヒトクローン規制法等の国際間における生命倫理規定関連法案の都合上、これらの技術は持っていても使うことは出来なかった。

 それが、大幅な法改正と規制緩和により使用可能となったのだ。


 結論から言うと、人類は伴侶無しに自身の子孫を残す技術を手に入れた。

 自身の体を脳まで含めて、有機物無機物の素材を問わず改造、換装する事が当たり前となった。

 男と女の性差などという物は、ファッションのスタイルの一つでしかなくなった。


 宇宙歴217年。

 火星の資源を採掘し終え、中継基地として月はその地表のすべてを建造物で覆われるまでに開発された。

 そして、猛毒の大気と硫酸の雨、灼熱の大地の試練を乗り越えて金星の開拓を人が始めた頃。

 人類の叡智は、長らく立ちふさがっていた相対性理論を、光の枷を、ようやく打ち破った。

 遂に人類は光速の壁を越え、ワープ航法を開発するに至った。


 宇宙歴3087年。

 太陽系から銀河へ、銀河から銀河団へ、人類文明は長い年月をかけ、その版図を宇宙規模にまで広げていった。

 そして、肉体までも捨て去った。


 火星開発当時から身体のサイボーグ化はされていたが、より高機能な体を、より高性能な頭脳を求め自らの体を改変し続けていった人類は、とうとう自我をプログラム化させ、AIと同化を始めるに至った。

 人体は、この時よりただの外部デバイスの一つとなった。


 宇宙歴50751年

 意識のみ、情報のみの存在となった人類は、長い時の中で徐々にその意識を統合させ、一つの超自我統一体となった。

 光の速さを超え、拡散する宇宙の隅々までを観測するに至った人類は、今まで持ちえた科学技術、知識、観測分析してきた情報のすべてをつぎ込み「宇宙」をシミュレートした。

 

 現実世界と寸分たがわず、精密にシミュレートされたその宇宙には、青く美しい星が浮かんでいた。

 シミュレーション上で46億年の時を経たその青い星には、かつての自分達と同じ姿をした人類が産まれていた。


 宇宙を生み出した人類は、そのシミュレート世界では「神」となり、新しく生まれた人類達に時に語り掛け、時に導いた。

 ある時、シミュレーション上の人類の一人が神に向かって尋ねた。


「神様、何故我々を作ったのです?」


 神は答えた。


「そういや僕たち、最初どんなんだったっけかなって」


どうして?……END

本作を最後までお読み頂き有難うございます。

良かったらこんな感じのギャグ小説も書いてるので、お立ち寄り頂けると嬉しいです!


「魔王と参謀」

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よろしくおなしゃす!

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― 新着の感想 ―
 追伸になりますが……  実は本末転倒がテーマなのでは?  合理性を求めて、理想を求めて、己を他の何かに置き換えて、遂には世界に溶け込んで。これを皮肉と言わずなんというのか。  宗教哲学は人間なんて…
時には初心を思い出すのも大事ですもんね!
 話は壮大ですが本当にありそうですね。  古代からの哲学って結構これに類似していますし。  といっても、これが神話となると世界の終焉で終わるため、こんなに希望に溢れたものとはなりませんけど。  ただ、…
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