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エッチで可愛いモンスターと一緒にいつかざまあしてやるからな!〜この世界だと最弱職と言われる魔物使いだけど召喚勇者が魔物使いになると少し違うようです

作者: 相生蒼尉



「……むぅ、最後の一人は『魔物使い』か」

「……あの、『魔物使い』だと何かダメなんでしょうか?」

「あ、いや……まあ、そうなるのだが……」


 ボクの疑問に魔術師っぽい人が言葉を濁す。嫌な予感しかしない。


 突然の異世界召喚。

 高校生のボクはたまたま廊下にいた数人の生徒と一緒に異世界にやってきた。


 水晶みたいなのを触るように言われて、他の人たちが『勇者』とか、『賢者』とか、『聖騎士』とか、そういう感じでやったぞ大成功だ的な大騒ぎになった後で――。


「……我らの間では最弱職と言われておる」


 ――なぜかボクだけが最弱職の『魔物使い』になってしまった。


 その結果、この場の空気もなんか感じが悪い。


 おかしい。ボクのラノベ知識だと『魔物使い』はそれなりにいいジョブなのに。


「あいつ、『魔物使い』だってよ」

「最弱職とか言われてんじゃん」

「え、マジか。ちょっと憧れてたのに『魔物使い』って。なんかカッケーじゃんか。でも最弱職なんだ? なんで?」


「……考えてもらえば分かるが、我らの世界では戦うことによって強くなる」

「レベルアップってヤツか」

「ま、そーだろ」

「ドラゴンとか?」

「いや。そもそも『魔物使い』が従えられる魔物は最弱に近いスライムやゴブリンなのだよ」

「え? そーなの?」

「弱そうじゃん」

「その通り。だが弱い魔物を使って倒せるのは弱い魔物だけ。ゆえに……『魔物使い』が強くなることはないのだ……」

「マジか……ヤベぇな」

「異世界で弱いままとか地獄じゃね?」


 ――そんな、バカな。


 ボクを抜きにして他の人たちと魔術師のじいさんが話してる。


「さらには……」

「まだあんのかよ!?」

「ある……『魔物使い』は魔物を引き寄せるというか、魔物に好まれるというか、テイムできた場合はともかく、それができなかった時には……ただただ危険を呼ぶだけなのでな……」

「うわー悲惨じゃね?」

「こりゃ死んだな……」


 ……勝手に殺さないでくれ。

 でも、この世界の『魔物使い』がそういうものだったならボクは既に詰んでない?


「でもよぅ、さすがにかわいそーじゃね?」

「だな? なあ、おっさん。誘拐みてーなマネしたんだからよ、せめてちょっとくらい金をやるとか、それくらいはしてやれよな」


 おう。意外と親切なヤツでちょっとびっくりだ。

 名前も知らないけど、一応、金の心配くらいはしてくれるらしい。


「……ふむ。『勇者』殿の言葉は確かにそうかもしれぬ。その方、どうだ? 金貨を10枚……いや。金貨30枚で解放してやろう」


 いきなり追放系の巻き込まれ召喚!?

 解放って!? なんか違うし!?


 お金もらってここに住むんじゃないの!?

 いや、だいたいラノベだと追放のその先には圧倒的な無双と完全なるざまあが待ってるんだけど!?

 でもこの世界だと『魔物使い』って最弱なんだろ!?

 どう考えても無双は無理だよな!?


「王都のできるだけ外壁よりも離れたところで……住むところもしばらくは用意しよう。外に出なければ魔物を呼び寄せることもないのでな。『魔物使い』になった者はだいたいそのあたりでひっそり暮らしておるか……どこかで死んでおる……」


 不吉すぎるだろ!? 脅しかよ!?


「あの、ここでずっと養ってもらうとかは……」

「働きもせずにか? 流石にそれは無理な話だな……」


 ボクの要望は即座に否定された。


「まあまあ、おっさん。金貨50枚くらいは出せるんじゃね?」

「むぅ、それは……できなくはないが……」

「なら50枚でどうにかしてやってくれよ。よく知らないヤツだけど」

「ふむ。『勇者』殿がそこまで言うのであれば……よく知らぬ者にも慈悲の心を持つなど流石は『勇者』というところか」


 うぅ差別というか、区別というか……『勇者』の要望は聞き入れるのかよ……。

 せめて金貨100枚とかにしてくれればいいのに!?


「だってよ。よかったな、50枚で」

「そーそー、感謝しろよー」

「がんばれよ~」


 ボクとは別に友達でも何でもない、互いに名前も知らない相手だ。

 微妙に手を貸してはくれたから、そこには感謝しとこう。


 いや、でも「がんばれよ~」とか、そんな軽いノリかよ!?

 30枚から50枚に増やしてくれた分はマジで感謝してるけどな!


「……せ、せめて」

「なんじゃ?」

「今夜くらいはここに泊めて下さいよぉぉぉぉぉっ!?」


 ボクの渾身の叫び。


 これには流石に魔術師の人たちも……折れてくれた。

 それで今夜だけは泊めてもらえることになった。泣き叫んだ価値はある。


 こうしてボクは、明日の朝にここ、王城から追い出されることが決まった。






「あれが晩メシかぁ……」


 ボクが食べたのは具が極端に少なくて味の薄いスープと、かなり硬いパン。パンはスープにしっかりと沈めてからでないと歯が欠けそうなレベルで超硬いヤツ。


 ……他の人たちはいいもん食ってるに違いない。くっ。泣きそうだ。


「とりあえず、トイレにでも行くか……」


 ベッドと窓しかない部屋から出て、ボクは通路を歩く。


 途中で他の人たちの部屋の前を通る。

 他の人たちの部屋はドアとドアの間隔が圧倒的に広いから、絶対にボクよりも広い部屋を使ってる。


 ――あっ。あぁん、あっ……ああっ、勇者さまっ、ああっ、勇者さまっ。


 ちょうどそこのドアのところから、何かが聞こえてきた。

 ボクはそのドアに近づき、耳を押し当てた。


『ああっ、勇者さまっ!』

『おらっ、おらっ! まだまだイクぜ!』

『もう、もう! もうダメ~~~!』


 ……ボクに対する差別は食事だけではなかった件。


 あいつらには女の子まで用意されてるぅぅぅぅぅぅぅ!?


 ……それをドアに耳を当ててまで聞いてるボクがいる。うっ。泣けてくる。


 と、とりあえず、トイレに行くんだ……。


 ボクは心が折れそうになりながらもフラフラとトイレを目指した。


 とある一部分だけはフラフラではなくピンと起立してたけど……。






「ふぅ。すっきりした……」


 予定していたよりもトイレには少し時間をかけてしまった。

 その結果、賢者タイムを迎えたボクは部屋に戻ろうとした。


 ……もうあの通路を歩いても、ドアには耳をくっつけないぞ、と心に誓って。


 薄暗い廊下。

 文明の進歩は中世か、近世か。


 いわゆるナーロッパ的な石造りの王城。


 これからこの世界に放り出されて……生きていかなければならない。


「……甘い匂いがさらに甘美な匂いに変わったと思うたのじゃが」


 これからの不安を感じていたボクの耳に、突然、女の子の声が聞こえてきた。


 声のした方を向いたら、そこには小学生くらいの女の子……って!?


 布面積ぃぃっっっ!?

 それ完全にアウトなヤツぅぅ!?


 色が黒だけど!?

 ああいうヤツは白が多いから黒は珍しいけども!?


 ボクのハニトラだけ!?

 なんでヤったらダメなヤツなんだっ!?


「その服、珍しいのじゃ。そなた、界渡りで召喚された勇者じゃな?」

「はい?」


 そう言われて、ボクはもう少しその「のじゃロリ」な女の子をよく確認した。


 何かがおかしい。

 薄暗さに馴染みすぎている。布面積以外は。


 いや……違和感が?

 あれは……羽? 背中から?


 え……?


「運がいいのじゃ。これで……手柄はわらわのものじゃな」


 女の子がぶるんと大きく腕を振るう。

 腕をあんなに動かしても、胸はちっさすぎて何の動きもないけど。


 でも、その手からなんか紫色のキラキラがボクの方へと向かって――。


「うわっ……なっ!? 頭が……ぐはっ!」


 い、痛い!?

 痛い痛い痛い!?


 頭の中を無理矢理かき回されたような……ありえないほどの激痛。


 ――意識がとびそうになったボクは、なんだかよく分からないまま、必死になっていた。


 女の子へと手を伸ばしながら、無意識にその言葉を口にする。


「て、ててて、テイム!?」

「なんじゃ? ずいぶん抵抗力が高いのじゃな? いや、これは……」


 女の子の目が大きく見開かれていく。


「……『支配術式』じゃと? ナメたマネをするものじゃな? 120年生きた魔族であるわらわにそんなものが効くなどと……うっ!? なんじゃこの魔力量は!?」

「うわぁぁぁっ!?」


 ボクは訳も分からず、とにかくその女の子に……ぎゅっと抱き着いた。


 わざとじゃないからセーフなはず。

 おまわりさんは呼ばないで。


「ぐはっ……うっ。な、なんじゃと……ふはっ……あっ。あぁっ……あっ」


 全ては偶然の産物だった。

 女の子の目が、一度光を失い……そこから赤く、ギラリと輝く。


「……あぁ。ご主人さま……ご主人さまご主人さまご主人さまご主人さまご主人さまご主人さまご主人さまご主人さまご主人さまご主人さまご主人さまご主人さま……」

「えっ……って。むぎゅ!?」

「くちゅっ、くちゅっ、ぶちゅっ……」


 気がついたら、ボクは女の子にめちゃくちゃキスされてた件。


 ……って!?

 これって事案じゃねーか!?


 ボクは大慌てで自分の部屋へとダッシュした。

 とにかくボクは自分の部屋にその女の子を連れ込んだのだった。キスしたままで。


「むちゅ、くちゅ、むむぅ、ぶちゅ、ぬちょっ、ぱちゃ……」


 ぐいっ。


「……とりあえずストップーー!?」


 ボクはめちゃくちゃキスしてくるロリっ子の顔面を鷲掴みにして、ぐいっとボクの顔から離した。


 残念ながら体は離れない。顔だけだ。

 大しゅきホールド状態で手足を絡めてきてるからな、こいつ。


 ……いや、本当に残念だと思ってるから!?


 嬉しくなんか……ない、こともない。初キスができた訳だし。


 うぅ。でも、ファーストキスがいきなりディープなヤツだった件……。

 もっとせつないファーストキスがしたかった。


「はぁはぁはぁ、ご主人さまぁ~~もっときしゅしゅるのじゃあぁ~~」

「いやいやいや。おまえさっきとキャラ変わりすぎだろ……」


 女の子の方があまりにもイっちゃってる感じがしたため、逆にボクはスンっと冷静になった。


 何が起きたのかはよく分からないけど……なんかさっき魔族とかいうパワーワードも聞こえたし。


 王城からはボクに対するハニトラはないみたいだったから……これって実は魔族からのハニトラ?


 いや、それも違う気がする……そもそもハニトラいらんだろ、ボクには。

 最弱の『魔物使い』なんだから。


「だいたい、その『ご主人さま』って何のプレイだよ?」

「……むむ? 特に何プレイでもないのじゃ。ご主人さまはご主人さまなのじゃ。わらわはご主人さまの『支配術式』に抵抗できなかったのじゃ」

「『支配術式』って?」

「何かの……おそらくご主人さまの能力によるものじゃ」


 ボクの……能力?

 それってつまり……『魔物使い』の力ってことか?


 え?

 まさか……ボクはこのロリっ子をテイムしちゃった感じなワケ?


「いやいや。おかしいだろ? 『魔物使い』は最弱のスライムとかゴブリンくらいしかテイムできないから強くなれないって聞いたぞ?」

「ふむ。それは確かにそうなのじゃ。なんじゃ、ご主人さまは『勇者』ではなく『魔物使い』なのじゃな? なるほど、道理で甘い匂いがすると思うたのじゃ」

「甘い匂い!?」

「『魔物使い』には魔物を誘き寄せる匂いがあるのじゃ」


 ……そこは合ってるのかよ。危険すぎるだろ。


 でも、それじゃあなんでこの子をテイムできたんだ?

 この子、ゴブリン程度の魔族なのか?


「……ええと、ボクの支配下にある魔物ってことで、いいんだよな?」

「魔物というか、わらわは魔族じゃな。サキュバスピクシーという種族じゃ」

「サキュバスでピクシーって……? 聞いただけでもうヤバいとしか……」

「そういうことなのじゃ……じゃから、のう。ご主人さま……じゅるり……」

「いやいやいや!? 小学生くらいのちっさな子はダメだって!?」

「何をゆうとるのじゃ? 小学生というのはよう分からんが、わらわは120歳なのじゃ。体は小さいかもしれんがご主人さまよりもずっと大人なのじゃ」


 それ、年齢制限解除されてるやつぅぅ!?

 ロリばばあじゃねーかっ!?


 いや、全然ばばあには見えないけど!?

 顔はちっちゃくてめちゃくちゃカワイイし!?


「つまり、問題ないのじゃ!」

「いや、待って。ちょっと待って。君はさ、ゴブリンよりも弱いってこと?」

「120年生きた魔族のわらわがゴブリンよりも弱いわけないのじゃ」

「じゃあなんでボクに……」

「それはおそらく魔力量なのじゃな。わらわの魔力をもってしてもご主人さまの『支配術式』には抵抗できなかったのじゃから間違いないのじゃ」


 魔力量?

 それってどういうことなんだ?


「魔力量で抵抗できないってどういうことか、説明してほしいんだけど……」

「むぅ。わらわはご主人さまといちゃいちゃしたいのじゃ。じゃがご主人さまの命令ならば仕方がないのじゃ」


 仕方がないと言いながらもずっと大しゅきホールドのままでボクの体を触りまくってくるけどな!


「ご主人さま。わらわがご主人さまを『鑑定』してもいいのじゃ? ご主人さまの許しもなく『鑑定』はできぬゆえ、許しがほしいのじゃ」

「え? 『鑑定』とか使えるの? すごくない?」


 チートの基本『鑑定』きましたわ。

 この子、万能すぎんか?


「使えるのじゃ」

「じゃ、『鑑定』してみて」


「やるのじゃ……ふむ。やはりそうじゃの。ご主人さまの魔力量は120年生きた魔族のわらわよりもはるかに多いのじゃ……これはおそらく……」

「おそらく?」


「召喚による界渡りによって勇者には大量の魔力が与えられ、その体を強化するという話なのじゃ。ご主人さまは勇者でありながら同時に『魔物使い』なのじゃろう」

「要するにボクの魔力量ってすごく多いってこと?」

「そうじゃのぅ。120年生きた魔族のわらわよりもはるかに多いのじゃから、かなり多いと考えてよいのじゃ」


 なんか……どっかの断頭台の人みたいな話だけど……。


 ボクの魔力量が多いのは間違いないらしい。


「つまり、『魔物使い』のテイムは魔力量次第ってことなのか……?」

「普通の人間の魔力量は少ないのじゃ。まして『魔物使い』となるような人間ではなおさらじゃ。じゃからゴブリン程度を従えるのが限界なのじゃ」

「ボクの場合は……」

「わらわを従えたのじゃから……おそらくいろいろな魔物をテイムできるのじゃ」


 ……それって。


 全然最弱職じゃないような?


「もう説明したのじゃ。では、始めるのじゃ」

「は? 何を……って!? うわっ、ダメだって!?」

「何をゆうておるのじゃ? こんなに硬くなっておるのじゃが?」

「そ、それは……」


 否定できない!?

 いや、〇リコンじゃないけど!? あんなにキスとかされたら!?


 さっきまで賢者タイムだったはずなのに!?

 これが……若さか!?


「しかも……実に甘美な香りがするのじゃ。少なくとも10分以内にご主人さまは精を放ったのではないかの? いい匂いなのじゃ……」


 バ……バレてる……。さっきのトイレのことが……。


「さあご主人さま……わらわの破瓜の血を浴びてたもれ……」

「えっ……」


 この子!?

 処女なんだ!?

 マジで!?


 そんなことに驚いている隙に、ボクはロリばばあサキュバスピクシーによって30歳で聖なる魔法使いとなる未来を永遠に奪われたのだった。







「……ん? なんだ……?」


 翌朝。


 目が覚めたボクは下半身の違和感に反応して、毛布をめくった。

 そしてすぐに再び毛布をかぶせた。


 世間様には見せられない状態がそこにあったから。


「ちょっとぉっ!? 何してんだよぉっ!?」

「むぐっ、むぐっ……ナニしておるのじゃ……むぐっ」

「いや、朝から!?」

「むぐっむぐっ……朝から元気だったのは……むぐっむぐぐっ、くちゅっ、ご主人さまの方なのじゃ……むぐっ」

「あ……ちょ……」


 はうっ!?


「むぐぅ……ぐぅ、ごくん……」

「あ、あぁ……」


 ボクのいろいろな尊厳が失われてる気がする……。


 いや。元の世界でラノベを読んでた頃は、羨ましいぞコラぁ!? なんて思ってたけどな!? めちゃくちゃ思ってたけどな!?


「……ふぅ。素晴らしい栄養補給なのじゃ」

「栄養補給……?」

「そうなのじゃ」


 ……ていうか、アレが栄養補給なんだ。


 それなら仕方ないよね。食事と同じだもの。

 そう。これは食事なんだよ、うん。


「……それよりも、ちょっとマズいな……」

「美味しいのじゃ?」

「そっちのマズいじゃなくて……え? 美味しいの!? いや、そうじゃない。そういう話は置いといて……」

「残念なのじゃ」

「残念がらない。ボクが心配してるのは、君を連れてここを出るのは目立つって話」

「目立つのはマズいのじゃ? ご主人さまは『魔物使い』なのじゃ。わらわが側に控えても問題ないのじゃ……ああ。わらわほどの魔族を従えるのは確かに目立つかもしれんのじゃ」

「それとはちょっと違ってて……」


 ボクは……ボクの『魔物使い』としての力が実は役立つものだったとしても、ここの人たちのために使う気はない。


 昨日の扱いには納得してないからな。

 あんな扱いされて協力とかしたくない。


 だから金貨50枚もらってそのまま出て行くつもりだし、できればこの国からも逃げ出したい。

 初手、逃亡。これが正解だと思う。


 そうするには……ボクが無能だと思われてる状態が必要だけど、このロリばばあっ子がいるとそのへんが誤魔化せない。


「……うーん。どうすれば……」

「……わらわが見えなけばいいのじゃな? それなら簡単なのじゃ」

「え……?」


 その瞬間、ロリばばあっ子の気配が薄くなって、さらには姿が消えていく。


「……えぇ?」

「わらわはサキュバスピクシーなのじゃ。姿を消すなどお手の物じゃ。じゃから隠密としてこの城に忍び込んだのじゃ」

「隠密って……」


 ……つまり忍者ポジション!?


「……偵察ってこと?」

「召喚魔術を使うという情報はあったのじゃ。わらわとしては……できればついでに勇者を暗殺して手柄を立てるつもりじゃったが……」

「実は昨日の夜にボクが殺されかけてた件」

「ごめんなさいなのじゃ……とにかくわらわはご主人さまの支配下になってしもうたのじゃ。いや、今はそれが幸せだと感じるのじゃが……わらわもついに番うことが叶ったのじゃし」


 ……えぇ、番うって。それってある意味で究極の洗脳なんじゃ? ちょっと自分の力が怖いかも。


 まあ、相手は魔物限定か。

 みんながみんなロリばばあっ子みたいな会話できる魔物でもないだろうし。


 ぺた、ぺたぺた。

 むちゅ、ぺろ。


「こら。姿が見えないからって……ちょ、おい……」

「ご主人さまはいい匂いなのじゃ。わらわは嬉しいのじゃ」


 これが『魔物使い』の真の力だというのか!?

 将来的にモンスター娘のハーレムモード!?


 いやいや!?

 でも危険だけど憧れる!?


「とりあえず舐めるのは禁止で」

「……残念なのじゃ……」


 ぺたぺた、さわさわ。


「触るのもほどほどに」

「……うぅ。ほどほどにするのじゃ……」


「このまま、姿を隠した状態でこの王城から出て行く予定だ」

「分かったのじゃ」


 あ、こいつ……後ろからバックハグで大しゅきホールドかまして……かかとで股間を優しく、だと!?


「こら、やめろって。あ、そういえば……」

「なんじゃ、ご主人さま?」

「名前は?」

「わらわの名前じゃな? わらわは……サキュバスピクシーのミカゲじゃ」

「ミカゲか。これからよろしくな、ミカゲ」

「もちろんなのじゃ。いっぱいよろしくするのじゃ、うへへ……」


 いや!?

 笑い方がエロすぎぃっ!?






「……実にあっさりと出てきたのじゃ……」

「まあ、そのくらい……ボクのことはいらないんだろうな……」


 いろいろと心配していたけど……金貨を受け取ったらあっさりと外に出されてしまった。

 しかも、簡単な地図を渡されて、案内もなく新たなボクの家に向かってる。


 もちろんミカゲは姿を消したままで、しかも、どうやら浮かんでるらしい。

 足音がしないはずだ。


「確かに一般的な『魔物使い』に対する姿勢と考えれば、そういうものかもしれんのじゃ。むしろ、金貨をたくさんもらえたという部分では優遇されとるのじゃ」

「まあ、金貨をもらえたからってクソみたいな扱いを受けたことは忘れないけどな」


 とりあえずボクは普通の『魔物使い』とは違って、120年生きた魔族をテイムできるくらいには強い。


 まずは……割り当てられた家というか、アパートみたいな部屋貸しのところみたいだけど、そこに行ってから、だ。


「地図が割とテキトーっていうか、まあ、これで分かるんだろうけど。道がシンプルみたいだし」

「人間の作る大きな街は、だいたい縦横の道で作られると聞いたことがあるのじゃ」

「まさにそれ。曲がり角の数を間違えなかったら、迷子にはならない、はず。ええと森の木陰亭っていうアパートか。なんか、宿屋っぽい名前だな……」


 そんなことを思いながら、ボクは地図通りに歩いた。

 そうすると無事、森の木陰亭にたどり着いた。


「……宿屋じゃのう」

「あ、やっぱり? そうじゃないかとは思ったけど」


 ……これ、まさか1カ月とか2カ月とかしか、暮らせない感じか?


 アパート的なやつじゃなくて宿屋って時点で……永遠ではない気がする。


 いや。気にするな。

 そもそもここから出て行くつもりなんだ。


 ボクは宿屋の中に入っていく。


「すみません。王城からここに行けと言われてきたんですけど」

「ああ、アンタかい。話は聞いてるよ」

「ボクの部屋をここに用意してもらったみたいで」

「そうさね。お城の役人からは1カ月って聞いてるよ」

「1カ月……」


 大きなお腹のぽっちゃり女将さんがボクの部屋は1カ月だと教えてくれた。


 短い!?

 いや、ホテルに1カ月って考えたら長いのか?


「ちなみに食事なんかは?」

「そりゃ別に決まってるだろ」

「ですよねー」


 くっ。

 1カ月なのは10日間とかよりもマシだけど、メシ付きじゃないのか。


 まあいい。

 もらった金貨でいろいろと買って、早くこの国を出て行こう。


(……ご主人さま)


 小さな声でミカゲが話しかけてくる。


「なんだ?」

(とりあえず部屋に行くのじゃ……)


 ……何か、秘密の相談でもあるんだろうか?


「すみません、すぐに部屋には入れますか?」

「ああ、問題ないよ。そらっ、これがカギだよ」


 ひょいと投げられたのがどうやら部屋のカギらしい。


「2階の角の部屋だから」

「はい、どうも」


 ボクは階段を上って、角の部屋を目指す。


 カギをぐるりと回して、ドアを押し開く。

 そして、そのまま部屋の中に入る。


 ボクではなく、そのドアをミカゲがぱたんと閉めてすぐにカギをかけた。


「それでミカゲ? 何が……」

「もう我慢できぬのじゃ。あぁ、ご主人さま、ミカゲは、ミカゲは……」


 一瞬でミカゲにベッドへと押し倒された。力でも負けてる気がする。

 ミカゲが消していた姿はもう見えるようになってる。


 早く部屋に行けってこれかよっ!?


 ボクの尊厳はいったいどこへ……。

 あっ……うっ……。


 いや、嫌ってわけじゃないとはいえ……あっ……。






 ミカゲと一戦交えて完敗してから、ボクはまず服を買いに出かけた。


 さて、服を買いに行く理由はひとつ。

 ミカゲが王城でボクを襲ったのはこの制服姿だったから、らしい。つまりこのままだとかなり目立つ。


 こっちの世界での一般的な服に買い替えて、制服は買い取ってもらう。


 それからは武器と鎧、それに食料もよく見て、できるだけ安くそろえた。

 それでも金貨は10枚以上、使うことになった。


 金貨50枚くらいではまともに生きていけないんじゃないかと思う。

 普通の『魔物使い』だったら。


「それでご主人さま。どうするのじゃ?」

「今日はここに泊って、明日の朝早くに出る。近くに森があるらしいけど……120年生きた魔族のミカゲはこのへんの森の魔物よりも強いんだろ?」

「もちろんなのじゃ」

「なら、置手紙でも書いて、そのままいなくなるよ」


 パターンとしては『探さないで下さい』って書き置きがいいだろうな。

 ちょっと自殺でも匂わせておけば……『魔物使い』をあそこまで見下してる国だから、勝手にボクが死んだと思い込むはず。


 それで忘れられてこの国とはさよならだ。


 森に行くのは……ボクは『魔物使い』なんだから、森みたいな魔物がいっぱいいるところでこそ、テイムが生きる。

 危険だけど、ミカゲ情報が正しいのなら問題ないはず。


 ……できればダンジョンがよかったけど、まだ情報が足りない。ダンジョンみたいなのはあるらしい。これもミカゲ情報だ。


 しばらくはミカゲ頼りだな。

 この世界のことはボクよりもよっぽど詳しい訳だし。


 せっかくの異世界で、せっかくのチートだ。

 いろいろ楽しんでやる。


 そんでもって……ボクを切り捨てたこの国が悔しがるような存在にいつか、なってやるからな!


 ボクとミカゲの戦いは! これからだ!

(ただの事実で、かつ、ダブルミーニングでもある。今から宿屋で夜を過ごすんだし。)






長編版は↓↓↓↓↓にリンクがあります!

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この世界だと最弱職と言われる魔物使いだけど召喚勇者が魔物使いになると少し違うようです ~え? 少しではない? まあ、そのへんは誤差だろ?~
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