第18話 死の水と憤怒の炎 〜ミシュリー vs. ナラハラ〜
「くらえ!ウォーターBOØWYズ!!」
「……アダーマズ・アダーム」
ビーフシチュー城へ続く大通り。
ナラハラとミシュリーの戦いは、杖を用いた魔法合戦で始まっていた。
三賢者のひとり――ゴージャス☆ナラハラは、こんな荒野でも、無から大量の水を生成でき、それを弾丸のように圧縮して放ってくる。
対するミシュリーは、多様な魔法でこれを防御。「アダーマズ・アダーム」は土魔法であり、俺――能都コトブキが、ビニグナントグリズリーに襲われた際にも使っていた呪文だ。
「わぁー!すっっげえーー!!僕、一度でいいから、果ての魔女さんと戦ってみたかったんですよー。いろんな魔法使えるの、超カッチョイーって感じ!?」
ミシュリーは言葉なく、ナラハラに杖を向けている。
(まだ底を見せないか……。早いとこケリをつけたいのだけれど――コトブキちゃんを巻き込むわけにはいかないしね)
ミシュリーは俺とングディンが戦っているはずの方向をチラッと見たが、俺たちは既にそこにはいなかった。
喋らないミシュリーに対し、ナラハラは海賊帽を押さえながら、遠慮なくお喋りし続ける。
「しかし果ての魔女様とはいえ、ちょっと僕のことをナメすぎですよねー。今度から『ナメプの魔女』って呼んでもいいですか?なんて言うんですか?緊張感?ちょっとばかし足りてないんじゃないっすかねー」
そして彼はまた魔法を放つ。
「三賢者を前にして、得意魔法以外で防げると思うなっつーのっ!!」
ナラハラの洗練された杖捌きで、杖の先端に青色の魔粒子が集まる。
「ハイドロ波乗りカノン!!レボ、リューション☆」
ナラハラらしい、大袈裟な呪文だ。
彼の正面に、4メートルはある巨大な波が発生。同時にその左右でも水が横向きに渦を巻き、それぞれの渦がミシュリーに向かって、ものすごい速さで高圧水流を発射した。
ザブンッ!!ビッシュウウウウウウウウウ!!!
ミシュリーは咄嗟に丸太を呼んで空へと逃げる。どうやら、もう正常に飛べるようになったようだ。
だが「ハイドロ波乗りカノン レボ、リューション☆」の水はミシュリーを追尾して、空に向かってぐいんと曲がった。
「ちっ……追尾型……」
ナラハラも、柱みたいに太い柄のついたデッキブラシに立ち乗りし、両手を後ろ手に組んだまま、サーフィンをするように追いかけてくる。
「僕もこの波にジョニーしちゃいますよぉ!?逃げて守ってばっかりじゃ勝てないでしょう!そろそろ得意の炎魔法で戦いませんかぁ??あっ無理かっ!僕が水魔法使いだから!!ふふふん!」
「減らず口……」
「減らず口じゃなくて実力ですぅ……!」
ナラハラは彼女を追いかけながら叫ぶ。
「あなたは天才かもしれませんけどね!炎より水の方が強いっ!常識でしょう!!つまり!この俺様が! 世界で一番!強い魔法使いってことなんだよ!!」
彼はデッキブラシの上で杖を振り上げた。
物量で押しつぶそうとする水と、左右の高圧水流のビーム、すべての速度が上がった。
(速い――)
ミシュリーは首を後ろに向け、上空で風魔法を放って、水を吹き飛ばそうとする。
しかし彼女の起こす突風でも、圧縮された水流はビクともしなかった。
(さすがにダメか。追尾条件は……なるほど、嫌な魔法だわ……)
彼女は丸太をギュンと急降下させた。
そして地上寸前で飛び降りると後ろを向き、左腕のある一点に魔粒子を集中させ、その腕を真横に伸ばした。
ナラハラの水魔法は、ミシュリーの胴体――ではなく、ミシュリーがつくった魔粒子の塊を目がけて飛んできた。
水はミシュリーの顔と左腕の横を、ビシュビシュと通過し、彼女の左手にほんの僅かに、ピッと切り傷をつけた。
追ってきたナラハラもデッキブラシから飛び降りる。
「さっすがぁ!もう追尾の仕組みもわかっちゃったんですか!」
ナラハラが興奮して尋ねる。
「敵の魔粒子の癖をインプットし、高速で追わせる魔法。しかも相手に当たるまで決して止まらない。
大した難易度ね。確かにちょっとナメてたのよ」
ナラハラは得意そうにニヤける。
「でしょうー??あなたも本気でやってくださいよ、果ての魔女さん!じゃないと――」
ナラハラが再び杖を構えると、彼の周りに邪悪な魔粒子が渦巻き出す。
「じゃないと、殺しちゃうかもしれませんから――」
ミシュリーは左眉をピクッとさせた。
「メキ・ルマータ――」
彼の杖の先から、禍々しい魔粒子を纏った水が、ミシュリーめがけて飛んできた――。
ミシュリーはそれを見て、大きく目を見開いた。
メキ・ルマータ。
それは、直撃した者を即死させる「死の呪文」である――。




