表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/14

第6話 ミシュリーの問答と秘密の特訓(2)

「そう言えばチンチン丸ちゃんって、この森にいても気絶しなかったわねー。大したものなのよ」

 ミシュリーは、テーブルの上のホワイトシチューを口にしながら言った。


 ミシュリーの家は、森の奥にひっそりと立つ、煉瓦造りの小さな家だった。外見は古びていても、その煉瓦の壁はあまりにも均一で美しかった。どうやって作ったんだろう。


 家の中はと言えば、決して整頓されているとは言えなかった。壁や天井には薬草が吊るされ、ミシュリーの座っている椅子の周囲には、たくさんの本や、よくわからない実験道具のようなものが雑然と置かれていた。本の種類も様々。魔法に関係があるのかもわからない本が何冊もあった。


「気絶って……?ああ、そう言えば森に入る前にそんなこと言ってたな。魔粒子?の濃度が濃すぎて、魔力を持たないものが入るとすぐに気を失うんだったか」


「恐らくその『王家の右腕(しょくしゅ)』のおかげよね。それが相当の魔力を秘めていると見たわ。ソボロデンブちゃんも、その右腕を使って強力な魔法を使っていたもの」


「そうなのか……?でも、まだ今の俺の力じゃ、魔法を使うどころか、戦闘中に言うことを聞かせることすらできない。自分の身すら守れないようじゃ……」


 真剣に悩んでいる俺の横で、トワリがおかわりと叫んだ。まーくんが対応したので、ミシュリーはそのまま続けた。


「その通り。だからこれを食べ終えたら、早速特訓するのよ♪せっかく魔粒子の濃い果ての森にいるのだもの。今日ここでレベルアップして、触手初心者脱却なのよ!」

「そうだな……。そうすればさ、俺はこの国を守れる国王に一歩近づけるのかな」

 ミシュリーはニコリとしながら頷いてくれた。


 俺は目をつぶって息を整えてから、シチューをガツガツと食べ始めた。

 ミシュリーの料理はとても美味しかった。まるで、身体の内側から力がみなぎってくるような、そんな感覚があった。


 ◆◇◆


 食事を終え少し経った頃、我々はミシュリーの家の外に出て、少し歩いたところで足を止めた。

 森の中に「近所の公園」くらいの広さの、木が生えていない広場のような場所があった。


「ここは?」

「ここは……かつての魔女の訓練所跡ですな?」

「まーくん大正解☆そう。この森でも5本の指に入る程、魔粒子が濃い場所なのよ。だから、まーくんとトワリは、少し休んでいたほうが良いかもね」

「ミシュリー、あれは持ってきましたか?」

「もちろんよ、トワリ♪」

 ミシュリーはトワリに、何かが入った紙袋を渡したようだった。


「さぁチンチン丸ちゃん。準備は良き?」

「準備も何も、一体何が始まるんだ?」

「ふふ。見ててね♪」


 ミシュリーは杖を取り出し。広場の方に向かってそれを構えた。そして、

 すーーーっ

 と、杖を動かし、指揮棒のように振り始めた。

 すると、ミシュリーの家の横に積まれていた丸太の山から、びゅんびゅん、びゅんびゅん、丸太が飛んできて、空中でスパッと切れたり、カンナがけをされたように皮が剥けたり、釘無しで組み上がるように、木材同士の形が綺麗に加工されたりしていく。


「す、すげぇ、なんだこれ」

「ミシュリーってば天才よね!でも、この森じゃなかったら、ここまでの魔法はなかなか使えないのよ♪さぁ、もうすぐなのよ♪それ!」


 クラシック音楽のクライマックスのように美しく、ダイナミックな杖の振り方をするミシュリー。

 木材同士がガシャンガシャンと合体し、アスレチックのように組み上がっていく。圧巻の光景だ。魔法の力ってすげー。 


「ふぅ。見てみて!完成なのよ!ふふふん♡題して!『ミシュリー=ミシュリーヌの炎のチャレンジャー!これができたら一人前!!』どんどんぱふぱふー!」


「おい、なんか……、どっかにありそうな名前だけど大丈夫か??」

「何が???」

「いや、なんでもないかも……」


「さぁ☆行くわよチンチン丸ちゃん!修行は楽しくやらないとね♪」


 トワリとまーくんが、風呂敷みたいなものを敷いて、座って紅茶を飲みながらこちらを見ている。さっきミシュリーから渡されたのはそれ??運動会を見に来た保護者みたいだね。


 俺の楽しい楽しい特訓の時間が幕を開けた。

 

あけでとう(2026/1/1)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ