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第52話 生きてきた意味


「レーヴァテイン!」


 顕現した長剣。掴み取ってすぐに地を蹴った。いつだって先手必勝、相手よりも早く首を刎ねれば勝てる。カガリは草原を揺らしながら低姿勢で駆けていく。


「飛電」


 雷が真っ直ぐに飛んでくる。カガリは横に跳ねた。ほんのわずかな動きで避けて、また少しレオナルドとの距離を詰める。まずは近づかなければ攻撃もできない。


 レオナルドは距離を取りたいはずなのに、大した魔導を使わなかった。なぜだろうと思って、すぐに気が付く。ここが草原だからだ。


 熱魔導は論外にしても、光魔導や雷魔導も威力を上げれば上げるほど、変換ロスで熱になる。そうすると草に火がついて、一面焼け野原になってしまう。さすがのレオナルドも燃え盛る草原で戦うわけにもいかないから、森へ引き返すしかなくなってしまう。

 

 それでもチャンスがあれば何だってやるだろう。砲撃も止まったとはいえ、レオナルドもろとも吹き飛ばされるというリスクも消えてはいない。時間をかければかけるほど不利だ。今のカガリにできることは、不意打ちの一撃のために、ありとあらゆる手を尽くすことだけだった。


 そう、いつだって自分に与えられたカードで戦うしかないのだ。


 息を静めて、長剣を構えなおす。牽制の魔導が足元にあたった。足を止めた瞬間、レオナルドが大きく踏みこんだ。振るわれた剣を受け止める。カガリは一度退いてから、すぐに腕を振り上げた。頭上から降ってきた刃を止めて、くるっと転回。足さばきだけで重心を移動させて、レオナルドの剣を受け流した。


 少しの油断もできない。動くのをやめれば撃ち抜かれて一刀両断されてしまう。だから攻めるしかない。


 上半身を大きく逸らして避ける。剣を土に突き刺して両手をあけたついでに、足払いをかけて彼の態勢を崩す。ぐらついたところに膝蹴りを入れる。反撃でこめかみを殴られた。大人しく受けて横に倒れる。突き刺さったままの剣を引き抜いて、一撃を受け止めた。


 踊るように足が動く。心拍数が上がっていく。

 全身が燃えるように熱い。


 息が上がる。汗が伝う。ぞくぞくと痺れる。


「…………よな」

「なんだ、聞えんぞ⁉」

「楽しいよなあ!」


 あはっ、と声をあげて笑う。

 レオナルドは一瞬目を見開いたけれど、すぐに口角をあげた。


「おまえはそういうことを言う人間だったか? 興奮でおかしくなっていないだろうな」

「酷いこと言わないでよ、悲しいな」


 また負けるかもしれないと本気で思った。今日もレオナルド・アルバーニという人間に勝てないかもしれない。無様な敗北と悔しさしか残らないのかもしれない。ただ手の内を晒しただけかもしれない。


 それでも思う――負けるわけにはいかない。

 勝ちたい。何を捨てても。何に代えてでも。


「俺はおまえに勝つよ!」


 自分はこの日のために生きてきたのかもしれない。そんなことを本気で思った。馬鹿馬鹿しい。興奮で頭がどうにかなってしまいそうだ。さっきから口角が痛いほど上がっていた。


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