第47話 実況席
拡声器の音がキーンと鳴る。放送席に座っている女子生徒は、ごほんと咳ばらいをしてから大きく息を吸った。
『星霜祭校内予選トーナメントもいよいよ大詰め。決勝戦に残ったのは、両者ともにまさかの1年生バディ! 運営委員がデータを調べたところ、前例のない事態となっております。噂を駆けつけてやってきた生徒も多く、観客席はすでに9割以上埋まっている模様。フィールド展開まであと3分。解説として両バディの教官であるアーネット先生をお呼びしました』
『休日に呼び出される私の身にもなるといい』
『素敵な仏頂面です! ここでそれぞれのバディの特徴についてお伺いしてみましょう。まずは大注目のクラウンですが、いかがですか?』
アーネットは腕組みをした。
『研究熱心な生徒諸君には今さらだろうが、やはりレオナルド・アルバーニの実力は頭一つ抜けているな。学年ランクは1位、近接と魔導のバランスもとれたオールラウンダーだ。戦闘技術はもとより、あれでなかなか抜け目がない。ヤマを張るのも上手いといえるだろう』
『バディはベル・エメットさんですね。魔導主体です』
『膨大な工程が要求されるような魔導でも、発動まで早い。威力を落として広範囲へ展開するのも得意だな。緻密さより効果範囲を重視している節がある。何より恐ろしいのは超遠距離射撃。アルバーニと組むことによって脅威が増しているだろう。近接は不得手だが、彼女が前線に出てくることはほとんどない――というかその前にアルバーニが片付けてしまうからな』
なるほど、と相槌を打った女子生徒はぺらりと紙をめくる。試合までの時間配分はいい感じだ。音量の調整をしながら次へいく。
『キャットについてはいかがでしょう?』
『ルイ・クラウディアは正統派だ。アルバーニと比較されることも多いが、違いをあげるとすれば機動力だろう。体格が小さいから身軽で、足も速い。そのあたりはカガリ・テイラーとも似ているし、性格的な相性もいい。テイラーの独断専行にもついていけるだけの察しの良さもある。前線を張ることもできれば、サポートに徹するだけの控えめさも持ち合わせているな』
『今カガリ・テイラーさんのお名前がでましたが、そちらについては?』
『あいつは――語るべきことが多すぎて、何から言えばいいかわからんな』
静かに身を乗り出すと、実況マイクを掴んだ。
『おい、テイラー! この実況を聞いているなら、昨日締め切りだった課題を早急に提出しろ。いい加減に単位を落とすぞ!』
『あのう、実況席で事務連絡は控えていただけると……』
女子生徒は苦笑いで時計を指さした。アーネットは深いため息をついてから、続ける。
『まあそうだな、テイラーは一言でいえば異端だ。今までの試合で一度も魔導を使用したことがない、というのは有名な話だろう。あいつの特技は圧倒的な身軽さを利用しての接近、そこからの奇襲。体術にはかなり自己流が混ざっているが、優れている。ただ私から見てテイラーの強さとは身のこなしではない』
『…………?』
『合理性だ』
アーネットは背もたれにどっかりともたれかった。
『あいつはどこまでも合理的なやつだ。合理的すぎる。だからこそ魔導騎士らしくない戦術も多用するし、それが勝利へつながったことも数え知れない。それが格上のクラウンに刺さるかが、戦況を左右するだろうな』
『さて、もうまもなくフィールド展開の時間となりました。異例の1年生対1年生。果たして優勝の座を勝ち取るのはどちらのバディでしょうか? みなさま盛り上がってまいりましょう! それではカウントダウンを開始します。3、2、1――』




