第45話 ゴールのその先
通路を抜ければ大きな扉があった。押し開けると、前も後ろも光に輝いて道が消えていった。クリア条件――目的地への到達を果たし、フィールドが崩壊した。数秒後にはもとの地下訓練場に立っていた。全身を襲っていたひりつきもなくなっている。両手を見れば、擦り傷も火傷もない綺麗な手のひらだった。
「や、やったぞ……」
レオナルドは魔導剣を戻しながら呟いた。彼いわく、魔獣の本体は魔導石の塊だったらしい。高い魔力がこもっている魔導石を壊すのには苦労する。カガリたちがぺしゃんこになるまでに間に合ったのは、相当運が良かったと言えそうだ。
へたりこんでいたカガリとルイに手が伸ばされる。エリザだ。彼女の手のひらを握り返せば、ぐっと引き上げてもらえた。
「エリザもありがとう。僕たちに熱風がかからないよう、魔導で補助してくれていただろう? おかげであの程度の火傷で済んだよ」
「ああ、だからやけに風が強かったんだ……」
「前衛を助けるのは後衛の役目ですから」
彼女は眉を下げる。それからレオナルドたちの方を向いた。
「さあ、もう時間がありません。クラウンのお2人は早く外へ」
そういえばそうだったと思いだす。あんな無茶な戦いをしたのは、クラウンを準決勝に間に合わせるためだ。フィールドから抜け出せたところで、試合に遅れれば苦労した意味がない。カガリが勢いよく顔をあげると、レオナルドはゆっくりと目を逸らした。
「……いや、その、正直、疲労困憊なんだが……」
「魔力……ほとんど残ってない……」
ボタンが2つほど飛んでいった制服をまとっているレオナルドは、「足腰も痛むな、うん。なんというか今すぐベッドで眠りたいような気が」と早口で続ける。
カガリはにこりと笑みを浮かべた。
「は?」
目はまったく笑っていなかった。
絶対零度の一音にレオナルドはびくりと肩を跳ね上げた。
「ようし、準決勝などものの3秒で片付けてやるぞ! みなは観客席で存分に楽しむといい! 行くぞベル!」
「うん。行こう。今すぐ行こう」
ガクガクと痙攣する足で駆けだした2人を見送った。だんだん小さくなっていく背中を見ていたカガリは、その場に仰向けになって倒れこんだ。ルイがあっと声をあげるが構いやしない。
「ほんっとに一歩も動きたくねー……」
指先さえ動かしたくないほどに疲れきっていたけれど、不思議と嫌な気分ではなかった。




