第27話 チーム結成
チームごとに集まって自己紹介をする声が聞こえる。がやがやとし始めた教室で、ルイはぱっと顔を明るくした。
「エリザ! 君と同じチームになれて嬉しいよ」
「私はまだバディを組んでいませんから、もしかしたらと思っていたんです。私もルイと同じで嬉しいです」
「チームメンバーになったからには安心してくれ。エリザは僕が守るよ」
「私もルイの援護ができるように頑張りますね。……あの、ところで」
エリザは眉を下げた。
「あの空気はなんでしょう……?」
そろそろ訊かなければならない、といった顔でゆっくりと振り返る。レオナルドは高らかに笑いながら、カガリの背中をバンバン叩いていた。
「いやはや、面白いことが起きたな。まさかクラウンとキャットが一緒になるとは。だが同じCチームになったからには、よろしく頼むぞ!」
「ぜんっぜんよろしくないんですけど……!」
背中が痛い。肩甲骨が砕けそうだ。カガリが割り振られたのはCチームである。キャットとクラウンにエリザが加わって5人だ。
わはは、と笑っているレオナルドとは逆に、カガリはげんなりとした顔で机に突っ伏した。こいつとだけは嫌だ、と思っていたのにピンポイントで引き当ててくる運の悪さを恨む。深すぎるため息をつくと、ルイが苦笑した。
「今さらだけど、クラウンにはベル・エメットがいるからね……。君とのバランスを取るならクラウン一択だよ。当然と言えば当然の結果だね」
「決勝戦の相手になりかねないんですけど⁉ 手の内ばれたらどうしてくれるんだよ」
「そんなことを気にしているのか。おれは構わんぞ。どうせ1度使った手は記録に残るからな、好きなだけ見ればいい」
「おまえは好きに暴露してろ。俺は嫌だ。絶対こっち見んな」
どちらかといえばレオナルドの言うことの方が正しかったけれど、1ミリも認めたくなかったのでそっぽを向いた。完全無視を決めこんでいるカガリに、レオナルドはしつこく構おうとする。けれど丸めた教科書で頭を叩かれて、レオナルドは「うおっ!?」と声をあげた。
「レオ、駄目。カガリは嫌がってる。警戒心を解かないと懐かない」
「それもそうだな! ……よしカガリ、好きな食べ物はなんだ?」
「馬鹿に1ついいことを教えてあげるよ。俺は猫じゃない」
「つれないことを言ってくれるな。それからおれも馬鹿じゃない、レオナルドだ。これからはぜひとも名前で呼んでくれ」
「……ベル・エメット。好きに呼んで」
一瞬だけ視線を向けたカガリは、ベルとだけ軽く握手をした。完全に嫌がらせのつもりである。けれどレオナルドは豪快に笑うだけで、意にも介さなかった。
レオナルドはくるりと振り返ったかと思えば、ずかずかとルイたちに向かう。びくっと肩を揺らした彼女は、反射でエリザの前に立ちふさがった。
「な、なんだ?」
「ルイは前に挨拶したな。改めてよろしく頼む。後ろの彼女は?」
「私はエリザ・フルールと申します」
「エリザは僕の婚約者だ。わかっていると思うけれど、彼女に手を出したら刺すよ」
「急に過激だな⁉」
3人は順番に握手をしている。なんだかんだで打ち解けているのは、エリザが間に入って微笑んでいるからだろう。彼女を前にすると、穏やかでいなければならない気がするから不思議だ。
「ねえ」
そばに立っているベルが、指先でツンとつついてきた。ルイよりもさらに小柄で、幼さの残る顔つきだが、ずっと無表情だから子どもには見えない。垂らした横髪がさらりと揺れる。
「あなたは本当に魔導が使えないの?」
「ノーコメント」
「隠しても無駄、どうせいつかわかる。でもまったく使えないのは不便。魔力操作の基礎は?」
「やってない。育ちが悪いもんで」
カガリは片肘をついた。意地の悪い言い方をしたつもりだったが、彼女は困惑も苛立ちも見せることなく、「そう」とだけ返した。
「なら早い方がいい。小手先でもきっと役に立つ」
「……ふうん」
「でもお手本はよく選んだ方がいい。私は教えるの下手だし、レオは馬鹿だから論外」
「おまえってあいつの従者じゃなかった……?」
「レオはそういうの気にしない」
彼女はふと視線を向ける。ほんの少しだけ目尻を下げてレオナルドの横顔を見た。
「レオは馬鹿だけど悪い人じゃない。だからカガリも駆け引きしなくていい」
あっそ、と呟いてだらしなく頬杖をついた。




