第24話 愉快な強敵
強制退去の光に包まれてルイ・クラウディアも消える。レオナルドは長剣を指輪に戻して、浅く息を吐いた。
「レオ」
木の枝を避けながら近づいてきたのはベルだ。拠点を守らせていたはずだが、勝負がつきそうだと見て近づいてきたのだろう。レオナルドは「あまり前線に出てくれるな」と苦笑した。万が一を思うと心穏やかではない。
「よくやってくれた。逆変換などと、急に無茶を言ったな」
「自覚があるならいい」
「ルイ・クラウディアの学年ランクを知っているか?」
「総合13位。個別までは調べられてない」
なるほど、と呟く。初戦の記録は軽くさらったくらいだが、思っていたよりも素早い動きだった。軽いレイピアで急所を突こうとする動きは特にいい。ただ地の力量ではレオナルドが勝っていて、落とすのに時間はかからなかった。いかんせん、剣筋が基本に忠実すぎる。
「どうだったの」
「悪くないな。経験を積めば伸びるタイプだ。近接と魔導の連携は拙いが、そのうち直してくるだろう。魔導操作そのものは相当スムーズだったからな」
「もう1人は? カガリ・テイラー」
彼女は小さく首を傾げる。レオナルドは少し迷ってから口を開いた。
「魔導を使えないという噂は本当だな。避けるだけで、まったく防御反応がなかった」
「すぐに落とさなかったのは、ルイ・クラウディアを釣り出すため?」
「ああ。様子を見たかったのもあるが」
「思ってたほど強くなかった?」
「…………」
レオナルドは黙りこんだ。優秀かそうでないかでいえば、きっと後者だ。
カガリは魔導騎士の基本である魔導操作がろくにできていない。間違いなく悪癖だ。魔導騎士としてのアイデンティティの半分を失った状態で、何ができるというのだろう。けれど、それでも。
「…………面白かったな」
真っ暗な空を見上げて、ぽつりと呟いた。
あの奇襲を思い出す。真上から音もなく降ってきた彼の目には、なんの感情もこめられていかった。恐ろしくなるほど冷たい目をしていた。敵の首をはねることしか考えていないのだろう。死なないはずの試合でなぜか死を錯覚して、一瞬頭が真っ白になった。今さら鳥肌がたって、くつくつ笑う。
「来るとわかっていても恐ろしいものだな。背筋に悪寒が走ったぞ」
あの1撃を防げたのはたまたまだ。カガリの合理性に賭けたら偶然上手くいっただけ。もし同じことがもう一度起きたとすれば、今度は首が繋がっていないかもしれない。
「ずっとつまらなかった。勝つのは当たり前だ、おれより強いやつはいないからな。それでもアルバーニとして戦わないわけにもいかないだろう。おじい様の期待を裏切るわけにもいかん」
「うん」
「いつも同じで、いつも戦って、いつも勝って――ひどく退屈だった。だが今日は違った」
レオナルドは大きく息を吸って、吐く。
「ああ――楽しかった!」




