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第19話 作戦立案


 演習ではフィールドを使う。魔導での攻撃はうっかり致命傷になりかねないし、魔導剣も武器でしかない。フィールドなら疑似再現であって、現実の傷にはならないので安全だ。


 フィールドに放り出された『キャット』――カガリとルイはあたりを見回した。


「変哲のない山だな。代わり映えがなくない?」

「平野に放り出されて困るのは君じゃないか。まっさきに刺されるよ」

 

 カガリは「まあね」と言いながら旗を掲げた。


 森や山はありふれたフィールドで、種類も1番多い。カガリにとっては障害物になる物が多くて、動き方にも慣れているから都合がいい。


 拠点決定時間は5分だけ。ルール上魔導を使うことはできないので、少しでも遠くまで歩いて、有利な拠点を見つけなければならない。けれど今回はその必要もなかった。カガリはフィールドの端まで向かって、適当に旗を突き立てる。


「じゃ、ここで」

「君はやることなすこと雑だね⁉ 少しでも足掻こうという気持ちはないのか」

「どこだって一緒じゃん」


 ぐーっと伸びをして、肩をすとんと落とす。


「だって今回、拠点は捨てるわけだし」


 作戦は事前に立てている。対戦相手は『クラウン』。レオナルドとベルの組み合わせだ。


 動き方は大方想像がつく。オールラウンダーのレオナルドが前線に立ち、ベルが後方支援するのだろう。ならレオナルドから潰して、ベルを孤立させればいい。問題はどのようにしてレオナルドを倒すかだが――。


「予定通り挟み撃ちでいくよ。君は東回り、僕が西回りだ」

「俺が注意を引いてる間にちゃんと仕留めてよ。できれば速攻。方法はルイの好きにして」


 バディとして、ルイを選んだことにはいくつか理由がある。脅迫しやすかったのが1つ、成績が良かったのがもう1つ。そして彼女がオールラウンダーであることがさらに1つ。


 カガリ単体では取れる作戦があまりにも少ない。奇襲一択ではあっさり対策されてしまうし、フィールドによっては最初から詰むことすらあり得る。けれどルイなら、その時々に合わせた柔軟な動き方ができるから、敵に作戦を読まれにくい。


「非常事態が起きたら連絡だったか。お互い、応答できないときはどうする?」

「俺を切っていい」


 そよ風に旗がなびく。カガリはぶらぶらと歩き回りながら答えた。


「俺だけなら落ちても問題ない。殲滅から奪取に切り替えて、ルイだけでも敵拠点に向かって」

「……この僕に対して、見捨てろだなんてよく言えるね」

「試合で見捨てるも何もないじゃん。現実的にいこうよ」


 本当に死ぬわけでもないし、と返せばルイはますます眉をひそめた。面倒なことになりそうな予感を察知したカガリは、くるりと背を向けた。


「試合開始、10秒前」


 空から降ってきた放送に思わず顔をあげた。ルイは一度だけ深呼吸をしてから、「行くよ」と言った。カガリは頷きだけを返して前を見据える。


「残り5秒。4、3――」


 鐘が鳴らされる。試合開始だ。

 直後、ルイは腕を振り上げた。


「レーヴァテイン!」


 指輪にはめられた石が輝いて、魔導剣に変わる。細身のレイピアを握りしめた彼女は、間髪入れずに魔力を巡らせた。


「反響!」


 人間には聞こえないほどの音を全方向にばらまき、その反射を利用し、どこに何があるのかを調べる音魔導だ。地形把握のために初手として選ばれる。


「どう?」

「フィールド中央が山の頂上だ。あとはなだらかな傾斜になっている。頂上に向かうための山道があるみたいだけれど、使わない方がいいね。切り開かれているから丸見えだ」

「なら早めに頂上を押さえた方がいいな。高所を陣取った方が何かと有利だし」

「頂上はたぶん――村だ。建物らしきものが点在している」


 どんなフィールドに当たるかは運しだいだ。こればかりは事前に知ることはできない。聞き取りながら地図を描いていたカガリは、靴先でとんとんと示した。


「まずは頂上の村を取る。そこでレオナルド・アルバーニを迎撃して落とす。もし手間取りそうなら、ルイだけでクラウンの拠点へ。これでいこう」

「了解した!」


 カガリとルイはそれぞれ別方向に駆けだした。


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