表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/59

第11話 バディの矜持


 ――遡ること十分。エイダンとの決着の少し前。カガリは最後の通信で「足止めの件で頼みたいことがあるんだけど」と言った。


「目くらましの煙幕みたいなのが欲しいんだよね」


 カガリからはそれだけだった。煙幕を使って何をしたいのかも言わないから、彼の意図が読めない。漠然とした注文にルイは首を傾げた。


「木を燃やそうか?」

「それは困る。俺が移動するのに使うし、うっかり咳きこんだら居場所がばれるし」


 なら代替案を出せ、と言いたい気持ちはやまやまだったが、時間がなかったので堪える。自分にある知識をすべて引っ張り出してきて、カガリの要望に応える方法を探す。ふと思い浮かんだのは昔の記憶。湖畔近くの別荘へいったとき、それを見た。


「なら――霧はどうだろう?」

「魔導で作れんの?」

「いや、直接は難しい。ただちょうど早朝だ。気温が低くて風も弱いから条件は整っている。君は敵バディを川まで追いこんでくれ」

「了解」


 通信はブツンと切れた。カガリにまとわせておいた魔力が尽きたのだろう。ルイから一方的に話しかけることはできるが、作戦を打ち合わせることはできない。


 一人になってもやるべきことは同じだ。拠点を捨てて、高台から駆け下りる。東に大きく迂回して川を目指す。


 川岸に片膝をついたルイは透き通る水にそっと手を差し入れた。指先は一瞬にしてかじかんで、突き刺すような痛みすら感じた。水温はかなり低いようだ。赤くなった手を引き抜くと魔導剣を呼び出した。今度は剣先をつけて魔導を発動させる。


「熱波」


 剣先から熱がじんわりと広がっていく。熱波は熱魔導の一つだが、攻撃に使えるほど激しいものではない。むしろ広範囲を温めるために使うものだ。水温は少しずつ上がり――。


「……上手くいった!」


 水面からもくもくと立ちこめるのは真っ白な水蒸気。思わず笑みを浮かべたルイはさらに水温をいじっていく。


「川霧をつくるなんて初めてだったけれど、案外うまくできたね」


 ルイがしたことは水温を上げる――たったそれだけ。


 川霧は冷え切った空気と高い水温の差によって生まれる霧だ。この初戦は朝一番の山中ということもあって相当寒い。たまたま条件がそろっていたので、あとは川の水温を調整すればいいだけだ。


 濃霧はあたりを漂い、少しずつ東へ流れていく。頃合いを見計らってルイは立ちあがった。


 カガリの作戦は何となく読めてきた。霧に身を隠しながら、あの超人的な身のこなしで1人ずつ落とすつもりなのだ。確かに最善手で勝算もある。けれどもし計画が狂うとすれば、この霧を払われてしまったときだ。


 もし、万が一。

 それが簡単に起こってしまうのが現実だ。


「…………勝つと言ったのは君だよ!」


 ルイは額から流れる汗を拭って、また駆けだした。たとえ最悪の経緯で、仮初のバディだったとしても、カガリと組むと決めたのは自分である。


 だから見捨てるわけにはいかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ