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プロローグ

彼女が廊下を歩いていると、

目線の先に一人の男子生徒を見つけた。

始業式が終わって

それぞれのクラスへ生徒達が向かう中、

どうやら彼は置いていかれたらしい。

しかしそんなことはどうでもいい。

彼女は歩くペースを変えることなく、

スタスタと男子生徒に追いついていく。

そして、彼女がその男子生徒を

今に追い抜こうとした時だ。

不意に男子生徒の体がふらつき、

壁に手をつきながら

廊下の床に座り込んでしまった。

なるほど。体調が優れない故に

置いていかれたのか。

全くもって不憫で可哀想である。

彼女は同情の目で男子生徒を見るが、

その視線の持つ意味はすぐに変わる。

綺麗な金髪から覗く男子生徒の首筋が、

まるで内出血でもしているかのように

青黒く変色していたのだ。

息も荒くなってきており、

徐々に青黒い変色が広がっていく。

そして、それは既に顔の半分を覆っていた。

目の前で『それ』が起こっている以上、

彼女には無視をすることができず

男子生徒の肩に軽く手を置いた。

すると瞬く間に男子生徒の肌は

元の健康を取り戻していき、

息も落ち着いてきた。

だが、急な体の変化に体力が

尽きてしまったようで、

男子生徒は気を失った。

彼女は少しだけその場で悩んだあと、

近くの教室に声をかけて人を呼び、

男子生徒を保健室に運ばせた。


――――――――――――――――――――


4月7日。金曜日。

2年生の1学期を迎えたばかりで、

クラスはまだ新しい空気に満ちていた。

誰も彼も友達を作ろうと必死に声をかけ、

気が合う者を見つけると

すぐに携帯の番号を交換する。

そうやって彼らが

自分達の居場所を確保する中で、

窓際の一番前の席に座る彼女は

誰と会話をするでもなく、

ただ窓の外に視線を向けていた。

そして、彼女は季節外れの蜂を見た。

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