表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山城史探訪 ~広島の地に眠る物語~  作者: かつを
第2部:中国制覇編 ~激戦と謀略の城々~
95/149

賀儀城、呉の船団 第4話:忍び寄る敵船

作者のかつをです。

第十二章の第4話をお届けします。

 

今回はついに戦が始まります。主人公、辰の初めての実戦。船大工として、彼がどう戦と向き合うのかを描きました。

 

※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

俺、辰が船大工として少しずつ仕事を任されるようになった、ある日のこと。

 

呉の入り江は、いつになく物々しい空気に包まれていた。

 

「――豊後ぶんごの大友の船が、伊予いよの沖合に現れたそうだ」

 

その報せはあっという間に、水軍衆の間に広まった。

 

九州の覇者、大友宗麟そうりん

 

毛利家とは長年、北九州の覇権を巡って争い続けている宿敵だ。

 

その大友が、ついに瀬戸内へと本格的に手を伸ばしてきたのだ。

 

「奴ら、何を企んでおる……」

 

親父も苦々しい顔で海を睨んでいる。

 

数日後、偵察に出ていた物見船が血相を変えて帰ってきた。

 

「敵船です! 数は十艘ほど! この呉の浦へ向かってきます!」

 

すぐさま出陣の鐘が鳴り響いた。

 

俺たち船大工も戦支度に追われた。

 

「辰! お前はこの船に乗れ! 船が傷ついたらすぐに直すんだ! 穴が開いたら板を打ち付けろ!」

 

親父にそう命じられ、俺は初めていくさ船に補修要員として乗り込むことになった。

 

胸が高鳴った。

 

これが、俺の初陣か。

 

小早川水軍の主力が次々と港を出ていく。

 

沖合で、大友の船団と睨み合いになる。

 

敵の船は俺たちの小早船よりも一回り大きい。

 

そしてその船首には、見たこともない筒が据え付けられていた。

 

南蛮渡来の大砲、「国崩し」だと誰かが言った。

 

ゴゴゴゴゴッ!

 

腹の底に響く轟音。

 

次の瞬間、味方の小早船のすぐ横で巨大な水柱が上がった。

 

「うわあっ!」

 

俺は思わず甲板に伏せた。

 

これが大砲の威力か。

 

もし船に直撃していたら、ひとたまりもなかっただろう。

 

「怯むな! 懐に潜り込め! 近づけば大砲は撃てん!」

 

将の号令が飛ぶ。

 

味方の船団は散開し、俊敏な動きで敵船へと肉薄していく。

 

だが、その時、俺が乗っていた船が大きく揺れた。

 

敵の矢が船べりに突き刺さっている。

 

「水漏れだ! 辰、塞げ!」

 

俺は慌てて槌と板を手に、穴の開いた場所へと駆けつけた。

 

船は俺の体だ。

 

俺が造った船だ。

 

ここで沈ませるわけにはいかない。

 

俺は夢中で板を打ち付けた。

 

戦の恐怖よりも、船を守りたいという船大工としての誇りが勝っていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

大友氏は南蛮貿易を通じて、いち早く大砲などの最新兵器を導入していました。その火力は、当時の日本の水軍にとって大きな脅威だったのです。

 

さて、初めて戦の現実を目の当たりにした辰。彼の運命は。

 

次回、「海上の砦」。

呉の浦全体が、一つの巨大な要塞となります。

 

よろしければ、応援の評価をお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ