表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山城史探訪 ~広島の地に眠る物語~  作者: かつを
第2部:中国制覇編 ~激戦と謀略の城々~
86/149

銀山城、因島村上の王国 第4話:掟を破る者

作者のかつをです。

第十一章の第4話をお届けします。

 

今回は、主人公、海斗の初陣を描きました。海の王として君臨する村上水軍。その力の裏側にある戦の厳しさと悲しみが伝われば幸いです。

 

※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

鐘の音を聞き、俺たち水軍衆は浜辺へと駆け出した。

 

銀山城の物見櫓からは、旗が振られている。

 

「――東より、船団、七艘! 旗印はなし! 掟を破る、海賊のようです!」

 

当主である吉充様の鋭い声が、浜に響いた。

 

「者ども、出陣じゃ! 村上の海の掟を知らぬ馬鹿者どもに、本当の海の恐ろしさを教えてやれ!」

 

「応!」という地響きのような雄叫びが上がる。

 

俺、海斗は、鉄心さんや父と同じ小早船に乗り込んだ。

 

ついに、俺の初陣だ。

 

武者震いが止まらなかった。だが、それは恐怖だけではない。一人前の水軍衆として戦えることへの高揚感が入り混じっていた。

 

我らの二十艘ほどの小早船は、まるで生き物のように滑るように海へと漕ぎ出していく。

 

やがて沖合に、敵の船団が見えてきた。

 

我らの倍以上の大きさの安宅船あたけぶねも混じっている。

 

「怯むな! 小回りが利くのはこっちじゃ!」

 

父の檄が飛ぶ。

 

俺たちは敵の船団の懐へと一気に潜り込んだ。

 

「火矢を放てーっ!」

 

鉄心さんの号令で、いくつもの焙烙火矢が放物線を描き、敵船の甲板へと降り注ぐ。

 

ドォォン! ドォォン!

 

轟音と共に、敵船から火の手が上がった。

 

敵兵が阿鼻叫喚の中、海へと飛び込んでいく。

 

「海斗! 乗り込むぞ!」

 

俺たちの船が敵の安宅船に横付けされる。

 

俺は父に続き、敵船へと飛び移った。

 

甲板の上はすでに地獄絵図だった。

 

血の匂い、肉の焼ける匂い、そして男たちの怒号と悲鳴。

 

俺はただ夢中で、槍を振るった。

 

目の前に立ちはだかった大男の腹に、槍を突き立てる。

 

生温かい感触。

 

俺は初めて、人を殺した。

 

吐き気がこみ上げてくる。

 

だが、次の瞬間には別の敵が斬りかかってきた。

 

考える暇などなかった。

 

生きるために、殺す。

 

それだけだった。

 

どれだけの時間が経っただろうか。

 

気づくと周りにはもう敵はいなかった。

 

甲板は味方と敵の血で赤く染まっている。

 

俺はその場にへたり込んだ。

 

手も足も震えていた。

 

これが、戦か。

 

これが、海の掟を守るということの、本当の意味なのか。

 

俺は、海の王になるという夢の本当の重さを、初めて知った。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

初めて人の命を奪い、戦の現実を目の当たりにした海斗。彼の心は大きく揺れ動きます。

 

そんな彼の元に、ある日、陸の覇者からの使者が訪れます。

 

次回、「毛利からの使者」。

海の王国に、新しい風が吹き始めます。

 

よろしければ、応援の評価をお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ