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山城史探訪 ~広島の地に眠る物語~  作者: かつを
第2部:中国制覇編 ~激戦と謀略の城々~
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三原城、隆景の夢 第1話:海に浮かぶ構想

作者のかつをです。

 

本日より、第十章「城ではなく、国を創る ~三原城、隆景の夢~」の連載を開始します。

 

今度の主役は、毛利元就の三男にして、知将として名高い小早川隆景です。彼がいかにして海の上に城を築くという壮大な夢を描いたのか。その構想の始まりを描きます。

 

※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

広島県三原市。山陽新幹線のホームに降り立つと、すぐ目の前に巨大な石垣の塊が、まるで忘れられた巨人かのようにそびえ立っている。三原城の天主台跡である。

 

駅のホームに城の石垣。それはあまりにも奇妙な光景だ。なぜこんな場所に城が。そして、なぜこの城は海に浮かぶ城、「浮城うきしろ」と呼ばれたのか。

 

その答えは、戦国の世の終わり、一人の知将が描いた壮大な「国創り」の夢の中にあった。

 

 

 

 

永禄十年(一五六七年)、春。

 

わたくし、吉蔵きちぞうは、主君である小早川隆景こばやかわたかかげ様のお供をし、沼田ぬた荘を見下ろす丘の上に立っていた。

 

眼下には沼田川がゆったりと蛇行し、その先には広大な干潟と、きらきらと輝く瀬戸内の海が広がっている。

 

「殿。やはりこの新高山城にいたかやまじょうをさらに拡張し、本拠地とされるのが最善かと存じます。山城こそが守りの要にございますれば」

 

家臣の一人が進言する。

 

厳島での大勝利の後、我が主、隆景様はこの備後国びんごのくにの新たな拠点となる城を築くことをお考えになっていた。

 

だが隆景様は、家臣たちの言葉に耳を貸そうとはなされなかった。

 

その静かな瞳は山ではなく、ただ一点、広大な海の干潟を見つめておられた。

 

「……いや、わしは海に城を築く」

 

隆景様のその一言に、その場にいた誰もが耳を疑った。

 

「は……海にございますか?」

 

「左様。あの大島、小島を繋ぎ、海を埋め立ててそこに新しい城を築く。もはや山に籠り、守るだけの戦の世は終わる。これからはこの瀬戸内の海を制する者が天下を制するのじゃ」

 

隆景様の構想は、我々の想像を遥かに超えていた。

 

「な……なりませぬ! 海を埋め立てて城を築くなど前代未聞! それに、平地に城を築けば守りは脆弱となり、敵に攻められた際いかがなさるおつもりか!」

 

家臣たちの反対の声は、もっともだった。

 

だが隆景様は、静かに首を振られた。

 

「わしが築きたいのは、ただの戦のための砦ではない。毛利水軍のすべてを集結させることができる巨大な港。そして、全国から人、物、銭が集まる商いの中心地。わしが創りたいのは、城ではなく、国なのじゃ」

 

国を創る。

 

そのあまりにも壮大な言葉に、我々は皆言葉を失った。

 

我が主君は、ただ戦に勝つことだけを考えているのではない。その遥か先の未来を見据えておられるのだ。

 

わたくしは改めて、我が主君の器の大きさにただ畏敬の念を抱くばかりだった。

 

この日、この沼田の丘の上で誰も見たことのない壮大な夢が産声を上げた。

 

それはこの備後の、そして毛利家の未来を大きく変えることになる、壮大な国創りの始まりだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

第十章、第一話いかがでしたでしょうか。

 

戦国時代が終わりを告げ、新しい時代が始まろうとしている、その変化をいち早く見抜いていた隆景。彼の先見の明が光ります。

 

さて、壮大な構想を打ち明けた隆景。彼はまず、誰に協力を求めるのでしょうか。

 

次回、「水軍の都」。

瀬戸内の海の荒武者たちが、三原の地に集結します。

 

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