宮尾城、厳島の囮 第5話:絶望の攻防
作者のかつをです。
第七章の第5話、クライマックスの籠城戦の場面です。
仲間が次々と倒れていく絶望的な状況。そして、主人公、勘助が初めて人の命を奪う葛藤。戦場の悲惨さを描きました。
※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
陶軍の攻撃は、波状攻撃だった。
第一陣が退くと、すぐに第二陣が押し寄せてくる。
俺たち宮尾城の城兵には、休む暇などなかった。
俺、勘助はもうどれだけの石を投げたかわからない。
腕は鉛のように重く、喉は渇ききっていた。
「庄太! 大丈夫か!」
俺は隣で同じように石を投げていた、幼馴染の庄太に声をかけた。
「……ああ。まだやれる! 神人根性、見せてやるぜ!」
庄太は顔中、煤と泥で真っ黒だったが、その目だけはまだ死んではいなかった。
だが、城内の状況は刻一刻と悪化していた。
敵の破城槌が城門に取り付き、ズン、ズン、と重い音を立てている。
城壁のあちこちから、敵兵が梯子をかけて登ってくる。
「防げ! 奴らを登らせるな!」
俺たちは槍で敵を突き落とし、煮え湯を浴びせかけた。
だが、敵の数はあまりにも多すぎた。
一人突き落としても、すぐに二人、三人と登ってくる。
「うわあっ!」
すぐ近くで味方の悲鳴が上がった。
見ると、城壁の上についに敵兵が這い上がってきていた。
俺は石を放り出し、竹槍を構えた。
「来るなーっ!」
俺は夢中で槍を突き出した。
ぐにゅり、とした嫌な感触。
敵兵の苦悶の表情。
俺は人を殺した。
神に仕える神人である俺が。
吐き気がこみ上げてくる。
だが、感傷に浸っている暇はなかった。
「勘助! 危ない!」
庄太の叫び声。
はっと我に返ると、別の敵兵が俺の目の前に迫っていた。
もう駄目だ。
俺が死を覚悟した、その時。
庄太が俺の前に立ちはだかり、その敵兵の腹を槍で貫いた。
だが、庄太もまた敵の刃を肩に深く受けていた。
「庄太!」
俺は駆け寄った。
庄太は血の気の引いた青い顔で笑った。
「……へへ。神人でも、やるときはやるだろ……? 約束、守れなくて、すまねえな……一杯、やりたかったぜ……」
そう言うと、庄太は俺の腕の中でぐったりと意識を失った。
俺は叫んだ。
友の名を。
だが、その叫び声は戦場の喧騒の中に虚しく吸い込まれていった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
親友を失った勘助。彼の心はもはや限界に達していました。
しかし、彼らの奮闘は決して無駄ではありませんでした。彼らが必死に稼いだ時間が、ついに奇跡を呼び込みます。
次回、「嵐の夜」。
天候が毛利に味方します。
物語は佳境です。ぜひ最後までお付き合いください。




