吉田郡山城、3千の覚悟 第8話:陶隆房、来たる
作者のかつをです。
第六章の第8話、物語の大きな転換点です。
絶望の淵にいた主人公たちの元に、ついに援軍が到着します。極限状況からの解放感を、感じていただければ幸いです。
※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
年が明けた、天文十年(一五四一年)の正月。
もはや城内は、骸が転がる地獄と化していた。俺も骨と皮ばかりになり、立つことさえ億劫だった。
もう、これまでか。
誰もがそう諦めかけていた、その時だった。
遠く、西の空に一条の狼煙が上がったのだ。
それは尼子のものではない。
丸に、桐の紋。
「おお……大内だ!」
誰かがかすれた声で叫んだ。
「援軍だ! 大内の援軍が来たんだ!」
その声に、城内がどっと沸いた。
俺は信じられなくて、何度も目をこすった。
だが、幻ではない。
西の山々から、可愛川のほとりから、次々と大内家の旗指物が現れる。その数、一万。
俺たちは皆、泣いていた。
声も出さず、ただぼろぼろと涙を流していた。
見捨てられては、いなかった。
俺たちは忘れられては、いなかったのだ。
すぐに城門が内側から開かれた。
援軍を率いてきたのは、大内家随一の猛将と謳われる、陶隆房という武将だった。
「待たせたな、毛利殿!」
馬上で叫ぶ、隆房。
それに応える、元就様。
その光景を、俺はただ夢を見ているかのように、呆然と眺めていた。
夜、城内には久しぶりに米俵が運び込まれ、温かい粥が振る舞われた。
俺は椀を抱え、ただ夢中で粥をかきこんだ。
温かいものが腹に染み渡っていく。
涙で粥がしょっぱかった。
生きてて、よかった。
心の底から、そう思った。
形勢は、逆転した。
今度は、俺たちが攻める番だ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
大内義隆の重臣・陶隆房(後の晴賢)率いる一万の援軍の到着は、この郡山合戦の決定的なターニングポイントとなりました。
さて、腹を満たし気力を取り戻した毛利・大内連合軍。ここから、怒涛の反撃が始まります。
次回、「逆襲の狼煙」。
弥助も槍を手に、初めて城の外へ打って出ます。
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