相方城、猛将の誕生 第4話:最初の突撃
作者のかつをです。
第四章の第4話をお届けします。
今回は、若き元春の猛々しい初陣の戦いぶりと、彼が初めて味わう挫折を描きました。戦の厳しさを肌で感じていただければ幸いです。
※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
包囲網が完成してから数日後。
俺、吉川元春は全軍に総攻撃を命じた。
「者ども、かかれーっ! あの城を踏み潰せ!」
法螺貝の音と太鼓の響きが、谷間にこだまする。
俺は自ら馬に乗り、先陣を切った。
総大将が先陣に立つなど常識外れだ。傅役の市正が必死に止めようとしたが、俺はそれを振り払った。
俺の力を示したかった。
父に、家臣たちに、そして敵に。
俺はこういう戦い方しかできぬ男なのだ、と。
「うおおおおおっ!」
俺は雄叫びを上げ、城門へと続く急な坂道を駆け上がった。
城壁から矢の雨が降り注ぐ。
だが、俺の目にはもはや敵の城門しか映っていなかった。
俺のその常軌を逸した突撃に、味方の兵たちの士気も極限まで高まっていた。
「若に続けーっ!」
俺たちはまさに怒涛の勢いで城門へと殺到した。
門の前では敵兵が必死の抵抗を試みていた。
俺は馬から飛び降りると、愛用の十文字槍を振るった。
「どけーっ!」
槍が薙ぎ払うたびに、敵兵が紙切れのように吹き飛んでいく。
熱い血しぶきが俺の頬を濡らす。
気持ちが高ぶる。
これだ。
これこそが、俺が求めていた戦だ。
父の小難しい謀略などではない。
ただ己の力を信じ、敵を打ち砕く。
俺の武勇の前に敵兵たちは恐れおののき、次々と退いていった。
「門を破れーっ!」
味方の兵が巨大な破城槌を城門に叩きつける。
ズン、ズン、と大地を揺るがす重い音が響く。
やがて、城門は大きな軋む音を立てて内側へと崩れ落ちた。
「一番乗りはわしじゃーっ!」
俺は誰よりも早く城内へと躍り込んだ。
その背後から、味方の兵たちが雪崩を打って続いてくる。
勝った。
このまま一気に本丸まで攻め上る。
俺がそう確信した、その時だった。
城内の左右の石垣の上から、突如として無数の弓兵が姿を現したのだ。
罠だ。
敵はわざと我らを城内の狭い通路におびき寄せたのだ。
「退けーっ! 罠じゃーっ!」
俺は叫んだ。
だが、遅かった。
頭上から再び死の雨が降り注いだ。
味方の兵たちが次々と悲鳴を上げ、倒れていく。
俺は歯ぎしりした。
これが、戦か。
血気にはやるだけでは、勝てぬ。
父の言葉が、脳裏に蘇った。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
猛将として知られる元春ですが、その彼の戦の原点は、このような痛い失敗から始まっていたのかもしれません。
さて、敵の巧妙な罠にはまり、多くの兵を失ってしまった元春。彼はこの苦い経験から、何を学ぶのでしょうか。
次回、「兵糧攻め」。
若き総大将は、父と同じ戦法を選択せざるを得なくなります。
物語の続きが気になったら、ぜひブックマークをお願いします!




