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山城史探訪 ~広島の地に眠る物語~  作者: かつを
第1部:謀神覚醒編 ~元就と安芸の国人たち~
17/91

亀寿山城、謀殺された城主 第3話:銀山の誘い

作者のかつをです。

第三章の第3話、お楽しみいただけましたでしょうか。

 

今回は、元就が仕掛けた甘い罠「銀山」の誘いを描きました。人間の欲望を巧みに利用する、彼の恐るべき手腕が光ります。

 

※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

吉田郡山城で催された宴は、前回にも増して盛大なものだった。

 

珍しい海の幸。京の都から取り寄せたという、澄んだ酒。

 

そして、元就様の心からのおもてなし。

 

我が主君、隆通様はすっかり気を許し、心から宴を楽しんでおられるようだった。

 

俺、新九郎だけが片時も気を緩めることなく、元就様の一挙手一投足を鋭く観察していた。

 

だが、怪しい素振りは何一つない。

 

本当に、俺の考えすぎだったのか……。

 

宴がたけなわになった頃。

 

元就様はおもむろに口を開いた。

 

「隆通殿。実は、貴殿にお見せしたいものが、あるのです」

 

元就様は声を潜め、隆通様に耳打ちした。

 

「この近くの山で、わしが密かに掘っておる銀の鉱脈が見つかりましてな。まだ誰にも話してはおらん。じゃが、友である貴殿にだけはお見せしたい。もしよろしければ、明日、二人だけで見に行かれませぬか」

 

銀山。

 

その言葉に、隆通様の目が輝いた。

 

銀はこの時代、銭よりも価値のあるものだ。それが手に入るとなれば、山内家の財政は大いに潤うことになる。

 

「ほ、本当ですかの、元就殿!」

 

「まことにござる。じゃが、このことは他言無用。我ら二人の秘密にござる」

 

隆通様は二つ返事で、その誘いを承諾した。

 

そのあまりにも無邪気な主君の姿に、俺は目の前が真っ暗になるような思いだった。

 

馬鹿な。

 

話があまりにもうますぎる。

 

銀山などという国家機密にも等しいものを、なぜ他家の城主に易々と見せるというのか。

 

罠だ。

 

これは、間違いなく罠だ。

 

俺は宴の後、隆通様の部屋へ駆けつけた。

 

「殿! お考え直しくだされ! 銀山の話は罠にございます! 殿を城の外へおびき出すための口実に違いありませぬ!」

 

俺は必死に訴えた。

 

だが、隆通様は酔いも手伝ってか、機嫌を損ねられたようだった。

 

「新九郎! お主、まだ元就殿を疑うのか! あの誠実な、お方のどこに偽りがあるというのだ! わしは元就殿を信じる! これ以上、わしの友を侮辱するでない!」

 

聞く耳を持っていただけなかった。

 

俺は部屋を追い出された。

 

廊下に一人立ち尽くす。

 

どうすればいい。

 

どうすれば、我が主君の命を守ることができる。

 

明日の夜明けには、隆通様は元就様と共に城を出てしまう。

 

残された時間は、もうわずかしか、なかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

当時、石見銀山などを巡って諸大名は激しい争奪戦を繰り広げていました。銀山は、それほどまでに魅力的な富の源泉だったのです。

 

さて、主君のあまりの無防備さに絶望する新九郎。彼は主君を守るため、ある決断をします。

 

次回、「最後の夜」。

新九郎は、たった一人で行動を開始します。

 

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