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山城史探訪 ~広島の地に眠る物語~  作者: かつを
第2部:中国制覇編 ~激戦と謀略の城々~
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茶臼山城、武士の粋 第6話:文化の力(終)

作者のかつをです。

最終話です。

 

ここまで全20章、長い物語にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

最後は、「文化の力」というテーマで、過去と現在を繋ぎ、シリーズ全体の締めくくりとさせていただきました。

 

※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

その後、茶臼山城の戦いがどうなったのか、歴史書には詳しくは記されていない。

 

一説には、武田軍は囲みを解いて去ったとも、あるいは後日、激戦の末に和睦したとも言われる。

 

だが、確かなことは一つ。

 

白井房胤という武将が、絶望的な包囲網の中で茶会を開き、敵をも感嘆させたという伝説が、数百年経った今もこの地に残っているということだ。

 

武力だけがすべてではない。

 

心、精神、そして文化。

 

それらは時に、剣よりも強く、鉄砲よりも遠くへ届く力を持つ。

 

房胤は、茶の湯を通じて、そのことを証明してみせたのだ。

 




……現代、広島市安佐南区。

 

茶臼山城跡は、整備された公園となり、子供たちの遊び場となっている。

 

その一角に、ひっそりと茶室が建てられている。

 

週末になると、地元の茶道愛好家たちが集まり、茶会を開いている。

 

「結構なお点前てまえで」

 

静寂の中、茶をすする音。

 

窓の外には、広島の街並みが広がっている。

 

かつて戦場だったこの場所で、今は平和に茶を楽しむ人々がいる。

 

参加者の一人、若い女性が、公園の案内板を読んで呟いた。

 

「昔、ここで戦の最中にお茶会をしたお殿様がいたんだって。すごい度胸だよね」

 

「ああ。でも、きっと度胸だけじゃないさ」

 

隣にいた老人が、目を細めて言った。

 

「どんな時でも、心に余裕を持つこと。美しさを忘れないこと。それが、本当に強いってことなんじゃないかな」

 

風が吹き抜ける。

 

木々のざわめきが、遠い昔の兵士たちの歓声のように聞こえる。

 

あるいは、房胤が点てた茶の湯気が、時を超えて今もこの山を包んでいるのかもしれない。

 

『山城史探訪』。

 

広島の山々に眠る、数多の物語。

 

名もなき人々が紡いできた、汗と涙と、そして誇りの記憶。

 

それらは決して消え去ったわけではない。

 

私たちが暮らすこの街の、土の下に、石垣の隙間に、そして私たちの心の中に、今も確かに生き続けているのだ。

 

(第二十章:包囲の中で茶会を ~茶臼山城、武士の粋~ 了)

(完)

『山城史探訪 ~広島の地に眠る物語~』、これにて完結となります。

 

皆様の応援のおかげで、ここまで書き続けることができました。

広島には、まだまだ語られていない歴史や伝説がたくさん眠っています。

この小説が、皆様の足元の歴史に目を向けるきっかけになれば、これ以上の喜びはありません。

 

もしよろしければ、作品の評価(☆☆☆☆☆)や感想をいただけると、作者は泣いて喜びます。

そして、いつかまた、別の歴史の旅でお会いしましょう。

 

本当に、ありがとうございました!

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