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山城史探訪 ~広島の地に眠る物語~  作者: かつを
第2部:中国制覇編 ~激戦と謀略の城々~
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甲山城、池に散った命 第6話:水面に散る(終)

作者のかつをです。

第十八章の最終話です。

 

悲劇の伝説と、現在の平和な風景。過去と現在を対比させながら、彼女たちの魂が安らかであることを願って物語を閉じました。

 

※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

城は落ちた。

 

翌朝、遠征から戻った城主は、変わり果てた城と、愛する妻の死を知り、慟哭したという。

 

彼は裏切り者の権藤を討ち果たしたが、失われた命は二度と戻らなかった。

 

その後、甲山城は廃城となり、歴史の表舞台から姿を消した。

 

だが、村人たちは忘れることはなかった。

 

あの夜、池に散った女性たちのことを。

 

池のほとりには、誰かが手向けた野花が絶えることはなかった。

 

雨の日には、池の底から女性たちのすすり泣く声が聞こえるという噂も流れた。

 

しかし、それは怨霊の祟りなどではなかった。

 

この土地の人々が、彼女たちの悲しみを忘れまいとする、優しい想いが生んだ伝説だったのだろう。

 

 

 

 

……現代、世羅町。

 

今高野山は、春には桜、秋には紅葉の名所として多くの人で賑わっている。

 

龍華寺の境内にある池は、今も静かに水を湛えている。

 

水面には赤い太鼓橋がかかり、鯉が優雅に泳いでいる。

 

観光客のカップルが、橋の上で写真を撮って笑い合っている。

 

「ここ、すごく綺麗だね」

 

「うん、静かでいいところだ」

 

彼らは知らない。

 

かつてこの場所で、誇りを守るために命を散らした女性たちがいたことを。

 

だが、それでいいのかもしれない。

 

彼女たちが守りたかったのは、夫の誇りであり、そして、いつか来る平和な未来だったのだから。

 

今のこの穏やかな風景こそが、彼女たちへの何よりの供養なのだ。

 

ふと、風が吹いた。

 

池の水面がさざ波立ち、紅葉した葉が一枚、ひらりと水に落ちた。

 

それはまるで、あの日の千代の着物の端切れのように、鮮やかな赤色をしていた。

 

(第十八章:女たちの悲劇 ~甲山城、池に散った命~ 了)

第十八章「女たちの悲劇」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

 

世羅町今高野山は、四季折々の自然が美しい場所です。もし訪れる機会があれば、美しい景色の奥にある歴史にも思いを馳せてみてください。

 

さて、物語はいよいよ佳境に入ります。


次回から、新章が始まります。

第十九章:広島城、誕生の礎 ~比叡尾山城、輝元の決断~


戦国の世が終わりを告げ、新しい時代が始まろうとする時。

毛利輝元は、山城を捨て、平地に巨大な城を築く決断をします。

広島城誕生前夜の物語です。


引き続き、この壮大な山城史探訪にお付き合いいただけると嬉しいです。

ブックマークや評価で応援していただけると、第十九章の執筆も頑張れます!

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