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山城史探訪 ~広島の地に眠る物語~  作者: かつを
第2部:中国制覇編 ~激戦と謀略の城々~
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神辺城、備後の栄枯盛衰 第7話:石垣は語る(終)

作者のかつをです。

第十六章の最終話です。

 

城はなくなっても、その歴史と記憶は消えない。現代の風景の中に、過去の物語を見出す。

そんな思いを込めて、この章を締めくくりました。

 

※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

神辺城が廃城となってから、四百年以上の月日が流れた。

 

かつて備後の中心であったその場所は、今、「吉野山公園」として整備され、桜の名所となっている。

 

春になれば、満開の桜が城跡を埋め尽くし、多くの花見客で賑わう。

 

子供たちの笑い声。宴会の賑やかな音。

 

それは、かつてこの場所にあった殺伐とした戦国の空気とは無縁の、平和な光景だ。

 

だが、注意深く歩けば、草むらの中に、土に埋もれた石垣の痕跡を見つけることができる。

 

苔むしたその石は、何も語らない。

 

しかし、その沈黙の中に、かつてここに生きた人々の熱い息吹が閉じ込められている。

 

山名氏の栄華。

 

大内と尼子の争奪戦。

 

杉原盛重の復興への情熱。

 

そして、福島正則による解体と、福山への継承。

 

幾多の城主が入れ替わり、多くの民がこの山を見上げ、祈り、涙し、そして生きた。

 

 

 

 

……現代、福山市神辺町。

 

山頂の本丸跡に、一人の老人が立っている。

 

彼は、眼下に広がる神辺の町並みと、その向こうに見える福山の市街地を眺めていた。

 

「ここから、すべてが始まったんじゃな」

 

老人は呟く。

 

神辺城は消えた。

 

だが、備後の歴史の「へそ」として、この地が果たした役割は決して消えることはない。

 

福山城の石垣の中に、そして、この地域に根付く文化や人々の気質の中に、神辺城の遺伝子は確かに受け継がれている。

 

風が吹いた。

 

桜の花びらが舞い上がり、空へと溶けていく。

 

それは、かつてこの地で散っていった名もなき人々の魂が、今の平和を祝福しているかのようだった。

 

時代の奔流に消えた城。

 

しかし、その記憶は、私たちの足元に、今も静かに眠っている。

 

(第十六章:時代の奔流に消えた城 ~神辺城、備後の栄枯盛衰~ 了)

第十六章「時代の奔流に消えた城」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

 

神辺城跡は、歴史ロマンを感じられる素晴らしい場所です。福山城を訪れる際は、ぜひそのルーツである神辺にも足を運んでみてください。

 

さて、物語はいよいよ終盤へ。

戦国時代の終わり、江戸時代の始まり。その狭間で揺れた、もう一つの「未完の城」の物語です。

 

次回から、新章が始まります。

第十七章:関ヶ原、遠き戦の果てに ~亀居城、福島正則の野望~

 

福島正則が築き、そしてすぐに壊された幻の城。そこに込められた野望と、幕府の冷徹な計算。

歴史の闇に葬られた真実に迫ります。

 

引き続き、この壮大な山城史探訪にお付き合いいただけると嬉しいです。

ブックマークや評価で応援していただけると、第十七章の執筆も頑張れます!

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