神辺城、備後の栄枯盛衰 第5話:新領主・福島正則
作者のかつをです。
第十六章の第5話をお届けします。
新しい時代の価値観と、古い山城の終焉。福島正則の合理的な判断は、神辺城に死刑宣告を突きつけます。
城と共に生きてきた人々の寂しさを描きました。
※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
新領主、福島正則様が安芸・備後四十九万石の太守として入国された。
神辺城にも、福島家の家臣が城代として入った。
だが、正則様ご本人が視察に来られた時のことだ。
わたくしは、街道の群衆に紛れてそのお姿を拝見した。
髭をたくわえ、眼光鋭いその風貌は、まさに戦国の荒武者。
正則様は、馬上で神辺城を見上げ、鼻を鳴らした。
「……山城か。古いな」
その一言が、わたくしの耳に届いた。
「これからの世は、平城じゃ。商いと政が一体となった、広い城下町が必要よ。こんな山の上では、不便で仕方があるまい」
正則様の目は、神辺の山ではなく、遥か南、海の方角を見ていた。
「海に面した平野に、新しい城を築く。百万石の格式を持つ、巨大な城をな」
その言葉は、すぐに現実のものとなった。
新たな城の建設地は、海に近い「野上」(現在の福山)と定められた。
そして、神辺城に対して、信じがたい命令が下された。
「神辺城を解体し、その資材を新城の建設に流用せよ」
廃城。
備後の中心として、数百年にわたりこの地を見守ってきた神辺城が、なくなる。
町衆の動揺は大きかった。
「城がなくなれば、この町は寂れる一方じゃ」
「我々はどうすればいいのだ」
だが、お上の命令は絶対だ。
わたくしは、店先から城を見上げた。
夕日に染まる神辺城は、まるで自らの運命を悟っているかのように、赤く、静かに燃えているように見えた。
「……ご苦労様でした」
わたくしは思わず、城に向かって手を合わせた。
戦乱の世を生き抜き、多くの武将たちの夢と野望を飲み込んできた古城。
その命脈が、今まさに尽きようとしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
戦国時代の終わりとともに、山城の軍事的な役割は薄れ、政治・経済の中心としての平城が求められるようになりました。神辺城の廃城は、まさに時代の流れだったのです。
さて、いよいよ解体工事が始まります。
次回、「解体の命令」。
城の最期の姿と、ある伝説の誕生。
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