神辺城、備後の栄枯盛衰 第3話:毛利の支配
作者のかつをです。
第十六章の第3話をお届けします。
毛利氏の支配下に入り、一時的な安定と繁栄を取り戻した神辺城。
名将・杉原盛重の治世と、復興する城下町の様子を描きました。
※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
長い戦乱の果てに、神辺城に新たな旗が翻った。
「一文字に三つ星」。毛利の家紋である。
厳島の戦いで陶晴賢を破り、中国地方の覇者となった毛利元就が、ついにこの備後の地も平定したのだ。
そして、神辺城の城主として送り込まれてきたのが、杉原盛重という武将だった。
「まこと、猛々しいお方じゃ……」
入城の行列を見た町衆は、その荒武者ぶりに恐れおののいた。
だが、この杉原盛重という男、ただの武人ではなかった。
城主となった彼は、まず荒れ果てた城の大改修に着手した。
「これからは、石垣の時代じゃ!」
小早川隆景様の助言を受け、それまでの土造りの城に、最新の技術を用いた石垣を導入したのだ。
わたくし、市兵衛も、人夫の一人として石運びに駆り出された。
重い石を運び上げながら、わたくしは驚いた。
盛重様自らが現場に立ち、石工たちに声をかけ、握り飯を振る舞っておられるではないか。
「よいか、この城は備後を守る要ぞ。お主たちの汗が、民の安眠を守るのじゃ」
その言葉に、嘘は感じられなかった。
城の改修と同時に、城下町の整備も進められた。
楽市楽座のような自由な商いが奨励され、他国からの商人も呼び込まれた。
わたくしの店も、以前の活気を取り戻しつつあった。
「毛利様の世になって、ようやく枕を高くして眠れる」
町衆の顔に、久しぶりに笑顔が戻った。
神辺城は、再び備後の中心として、以前にも増して力強く輝き始めた。
山頂にそびえる総石垣の天守台。
それは、毛利の威光を示すと同時に、ようやく訪れた平和の象徴のようにも見えた。
わたくしは、新しくなった城を見上げ、今度こそ、この平和が続きますようにと祈った。
だが、歴史の歯車は止まらない。
東の空から、新たな暗雲が立ち込め始めていた。
織田信長。
その魔王の影が、播磨を超えて、この備後にも忍び寄ろうとしていたのだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
杉原盛重は、勇猛果敢なだけでなく、築城術や政治にも長けた優秀な武将でした。神辺城の石垣は、彼の時代に整備されたものと言われています。
しかし、平穏な時代は長くは続きません。天下分け目の大戦が迫ります。
次回、「関ヶ原の激震」。
時代の奔流が、神辺城を飲み込みます。
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