表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山城史探訪 ~広島の地に眠る物語~  作者: かつを
第2部:中国制覇編 ~激戦と謀略の城々~
107/149

大可島城、足利義昭の亡命 第3話:鞆幕府

作者のかつをです。

第十四章の第3話をお届けします。

 

今回は鞆幕府の誕生と、それに伴う港町の熱狂を商人である主人公、惣助の視点から描きました。

 

※この物語は史実や伝承を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

わたくし、湊屋惣助の読みは当たった。

 

足利義昭様が大可島城に御所を構えてから、この鞆の浦は生まれ変わった。

 

「鞆幕府」。

 

人々はいつしか、そう呼ぶようになった。

 

反織田信長を掲げる義昭様の元には、全国の大名家から次々と使者が訪れた。

 

毛利はもちろんのこと、西からは九州の島津、大友。東からは越後の上杉、北陸の本願寺勢力。

 

彼らの使者が昼夜を問わず、この小さな港町を行き交う。

 

町は空前の好景気に沸いた。

 

宿屋はどこも満杯。

 

飯屋や飲み屋からは夜通し賑やかな声が聞こえてくる。

 

わたくしの湊屋も、笑いが止まらぬほどの忙しさだった。

 

諸国の使者たちへの献上品、食料、酒、あらゆるものが飛ぶように売れていく。

 

「若旦那! 米がもう底をつきそうです!」

 

「すぐに周防から船を出させろ! 倍の値で買い付けても構わん!」

 

わたくしはまさに水を得た魚だった。

 

銭が銭を呼ぶ。

 

わたくしの蔵には銀や銭がうず高く積まれていった。

 

だが、そんな狂乱の日々の中で、わたくしは少しずつ違和感を覚え始めていた。

 

大可島城の幕臣たちは、日に日に傲慢になっていった。

 

彼らは都の公家気取りで我ら町衆を見下し、何かと理由をつけては法外な金品を要求してきた。

 

「公方様への献上金が足りぬ。湊屋、そなたが立て替えよ」

 

そして何よりもわたくしを不安にさせたのは、肝心の義昭様ご自身のご様子だった。

 

彼はただひたすらに、信長打倒の御教書みぎょうしょを書き続けるばかり。

 

そのお姿にはもはや都を追われた悲壮感はなく、ただ過去の栄光にすがりつく老人の頑なさしか感じられなかった。

 

この鞆の浦の賑わいは、しょせん砂上の楼閣なのではないか。

 

毛利様という巨大な力の上で踊らされているだけの、虚ろな宴なのではないか。

 

そんな不安がふと心をよぎる。

 

だが、わたくしはその不安を帳面の数字で無理やり打ち消した。

 

今は稼ぐ時だ。

 

この好機を逃す手はない。

 

わたくしはまだ気づいていなかった。

 

この熱狂の宴の終わりがすぐそこまで迫っていることに。

 

そして、その終わりを告げる黒い影が、東の海から静かに忍び寄ってきていることに。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

鞆幕府は数年間、確かに反信長勢力の中心として機能しました。この小さな港町が日本の歴史を動かしていた時代があったのです。

 

しかし、その宴は長くは続きません。

 

次回、「信長の影」。

天下人、織田信長がついに動き出します。

 

よろしければ、応援の評価をお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ