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第五話 構えるということ

 「その構え、形だけになってるぞ」


 秋吉師範の一言で、僕の体が固まった。


 今日は基本技の復習日。順突き、逆突き、そして構え。

 何度も練習してきたはずの“構え”なのに、「形だけ」と言われた。


 鏡の中の自分は、たしかに構えていた。右足を引いて、重心を落とし、左手を前に。

 でも、何かが違う。何かが、空っぽだ。


 「構えは、戦いの準備じゃない。心の“受け入れ”の姿勢だ」


 師範の言葉は、いつも簡潔で深い。


 受け入れ。構えることで、自分の状態を受け止めるという意味だろうか。


 


 試しに、深く息を吐いてから構えてみる。

 形だけではなく、自分の“中”がそこにあるように。

 すると、なぜか体のバランスが少しだけ良くなった気がした。


 


 「美波さん、どうしてそんなに構えが自然なんですか?」


 休憩時間、思い切って聞いてみた。


 彼女は笑って言った。


 「昔は“かっこよく構えたい”って思ってたけど、今は“ちゃんと立ってたい”って感じかな」


 


 ちゃんと立つ。ありのまま、今の自分を正直に受け入れて、その場所に“在る”。


 それが構えなのかもしれない。


 


 その日、僕は初めて、技の前に“構える”という時間が愛おしく思えた。


 戦うためじゃない。ただ、ここにいるために構えるのだ。


 


 白帯の僕は、ようやく“立つ”ことから始めている。

こんにちは、たなかです。


第五話では「構え」をテーマにしました。

突きや蹴りの派手な技の前に、必ず存在するのが「構え」です。でも、実際にやってみると、これが一番難しい。


形は真似できても、“中身”が空だと、すぐにバレるんですよね……(苦笑)


僕も最初のころ、「構えが格好悪い」と言われてショックを受けたことがあります。けれど、しっかり立つこと、地に足をつけることができるようになると、自然と動きにも芯が通ってくる気がしました。


次回は、「突き」のお話に戻ります。

ただの打撃ではない、“言葉にできない力”をどう伝えるかを書いてみたいと思います。


ここまで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございます!


――たなか

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