学園8
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リナ達が珍騒ぎをして遊んでいた頃、他でも小此木のように涙目になっている者がいた。
「君君……」
『パンッ……コンッ……パンッ……コンッ……』
「ちょっと話を聞いて欲しいな…………」
空気が破裂する音を鳴らしながら、赤い絵の具で塗りたくったように、真っ赤な髪をした少年が、ライフル型のコルク銃を構えては景品を落としていく。
どうやら、リナとは違う騒ぎを起こしているのは、射的で遊んでいる彼。
『パンッ……ゴトン……』
「おぉーーーーー!!」
「良い腕してるな」
「だな、上手ぇよアイツ」
赤い髪を持つ少年は、周りを気にせずに射的をしているが、彼の周りには人だかりが出来て、彼が景品を手にするごとに周りは歓声を上げる。
たかが景品を獲得するだけで、周りにいる上級生達が騒ぐのには訳がある。
これは新入生を歓迎するお祭り、それは夏祭りの射的のような取れない景品を置いているのでは無い、取れる景品を置いている……が、簡単に取れるものでは無い。
景品の中に重りを仕込み、景品のウィークポイントを正確に狙わないと落ちないようしてある。
それは意地悪をしているのではなく、地上にいる化け物達を仕留めるのには、的確な射撃が求められるというのを模しているから。
赤髪の少年は、一発目を撃って景品にコルク弾を当てた時から、景品の重さに違和感を感じ、数発当てた後に、これらの景品が意図的に仕込まれているのを勘付いている。
『パンッ……コンッ……パンッ……コンッ……パン……コトンッ……』
数発使わなければ落とせない景品を、数発使って落とすというのは正攻法なやり方なのだが、
「もぐ…もぐ……」
赤髪の少年の周りには、落とした景品であるお菓子が、これでもかと積まれている。
攻略法は想定内。
想定外なのは、同じ景品でも重りの付いている場所が違うので、何発か当てて景品のウィークポイントを
見付けて貰うはずが、赤髪の少年は一発当てただけで、景品の動きからウィークポイントを見抜いてしまう。
普通の新入生でも景品を取りはするものの、景品を積む程に取る新入生は滅多にいないから、上級生達は驚いている。
そうして、想定よりも多く景品を奪われた上級生の店主は、
「ふっふふふ……ちょっと待ってると良い……」
歯ぎしりをして悔しがるのではなく、何か不敵な笑みを浮かべて、ガランガランになった棚に景品を補充する事無く店の裏に回る。
「遂にあれが来るのか……」
「俺達の世代の時には、飾られただけだったからな……」
店主が、店の裏側に回ったの見た上級生達がザワザワとし始め、
「…………」
赤髪の少年は、周りの異様な雰囲気に、お菓子を食べるのを止めて、これから何が起きても良いようにコルク銃を手入れするように撫でると、
「………後輩にここまでされて後に引けるか……いや、引ける訳がない……今こそ御神体が唸りを上げる!!」
上級生が店の裏側から戻って来て、やけっぱちになりながら棚に何かを置き、仰々しく何かに祈りを捧げる。