学園6
ツバメの拍手に照れたのだろうか、小此木は頭を掻くと……
「いや~そんな事ないですよ……もっとやんや、やんやして貰えると嬉しいです」
……照れる訳など無かった。
小此木のおふざけに、ツバメの拍手をする間隔が広くなって、
「やんや、やんや」
小此木の言われた通りに「やんや、やんや」と言いながら大きく拍手をしてあげる。
「ありがとうございまっすぅ!!」
自分を讃えてくれるツバメに、小此木はVサインで応えていると、
「……好き勝手するのは良いけど、アタシはどうなるのよ」
リナがジト目で、二人の事を見ている。
「どうかした?」
リナに声を掛けられた小此木は「何が」みたいな雰囲気で返すと、リナが、いきなり体育館の床に座り込んで、
「うぅ……小此木もツバメもバカ野郎だよ……アタシを利用していつもイチャついてさ……良いよ良いですよ~別に……アタシだっていつか………………」
ツバメと小此木の、ハチミツリンゴパフェよろしくな甘酸っぱい青春にあてられたリナは、黒い影を身に纏って漆黒の闇へと堕ちていく。
「オーイ……リナさーん」
「いつも……そんなにあてつけて楽しいんだ……ふんっ……どんなに甘い練乳がけみたいな青春でも、食べられる訳じゃないし……帰りにでも甘味処…………」
「リナ~~…………」
テンションを落として拗ねてしまったリナに、ちょっと心配になって来ている小此木。
それに対してツバメは、ニコニコしながらリナを観察してから、急に小此木の後ろに隠れて身を縮める。
「……何を?」
自分の身の後ろに隠れるバメの行動に、小此木の顔が青ざめて、逃げようとするのだが、肩を掴まれて逃げられない。
せめて出来る事と言えば、首だけをツバメの方に向ける事だけ。
首を最大限回して、ツバメの方に視線を向けると、
「リナをサルベージ……」
ツバメがイタズラぽくっ軽く舌を出してから、息を大袈裟に吸い、考える人みたいに小難しい顔をしてから、
「こういうのを取り付くおっぱいが無いって言うんだな……うんうん、勉強になるなぁ……」
ツバメの声色はハッキリ言って、小此木に似てはいなかった……しかし、
「うぎゃぁぁぁぁーーーーーー!!!!!!!!」
「ひあたぁーーーーー!!!!!!!?」
漆黒の闇に包まれていた深海から、リナを一気にサルベージさせる事に成功し、リナは体育館の床から立ち上がったのだが、
「よね……うん、そうだよ……貰って良いよね……だって小此木は男の子だもん……いらないなら恵まれない人に……」
せっかく持ち上げた体だが、上半身だけを前のめりに崩して、水泳選手がプールに飛び込むように下を向いてうつ向くが、両手だけは小此木の胸を掴んで震える。
自分の置かれている状況と、リナの言葉に、小此木の顔が更に青ざめると、
「手を離して!!抉られちゃう!!抉られちゃう!!」
後ろにいるツバメに、必死に命乞いをする。
胸を掴まれている小此木、貧乳のリナ……そこには動物的な直感が無くても、これから自分に対して起きる惨劇、危機が迫っているのは感じ取れるのだが、
「えいっ……」
ツバメも、小此木がこれからどうなるのか分かっていて、逃げないように後ろから、腕ごと抱きしめて動けなくする。