学園5
「フニャッフニャッフニャッフニャッフニャッァ~~~~」
猫のように鳴いてお許しを請うが、
「…………………ふふっ」
ツバメは止めるどころか、タメ息のような恍惚な吐息を漏らす。
恍惚になっているツバメの仕草に、小乃木はある事に気付いて腰に手を当てると、
「……うん、大丈夫。後少しで満足するよ」
してやったりという顔をして胸を張るが、それは決して救いの手では無い、諦め勧告である。
「ヒョンナ~~~」
今日一日は、ほっぺたが赤く染まる事を覚悟しなければならなくなった時に、それは来た。
『これよりレクリエーションを始めます。登録番号A001~020、B001~020まではシミュレーション室まで来てください。シミュレーション室が分からない人は教官か最寄りの先輩に聞いてください』
スピーカーから天からの言葉が流れると、体育館にいる全上級生が『ピクッ』と体を震わせる。
先程まで笑いながら半袖で焼きそばを作っていた奴や、麦ワラ帽子を被ってニコヤかに水風船を売っていた奴が、いきなり裏家業の人のように暗い顔に変わるのは遠慮して貰いたかった。
雰囲気が一転した事により、店前で注文していた下級生、遊んでいた一年生達が慌てふためいてしまう。
そして、一心不乱でリナのほっぺたを『フニャッフニャッ』していたツバメも、非常に……本当に名残惜しそうに手を止めるが、
「フニャッン!?」
最後と言わんばかりに、ほっぺたを横に伸ばせるだけ伸ばしてから手を離すという、いかにも子供らしい可愛いマネをして見せてくれる。
やっとのこさで解放されたリナは、ほっぺたを押さえながら、
「ふしゃー、ふしゃー」
威嚇をして牽制を行う。
「ふしゃー、ふしゃー」
そんな猫ばりに唸っているリナに、小此木が近付いて喉をコショコショとくすぐり、
「良い子だからご機嫌直そうね~~」
手玉に取ろうとしたが、
「ふしゃーーーー!!」
さっきの諦め勧告を根に持っているのか、小此木の手首を噛みつこうと口を開ける。
しかし、小此木は急に目を細めると、
「そんな何度も……!!」
手を即座に引いて『アチョー』とポーズを取って魅せる。
「凄い、リナ相手に避けるなんて」
ポーズを決める小此木に、ツバメは小さい拍手をしながら嬉しそうにしている。