学園2
ちなみに、このデータは学校を卒業しても消えないので、ほとんどのパイロットカードには初戦が黒星で飾られている。
上級生から、下級生へのプレゼントを贈る伝統行事……なのだが、上級生にも恐れている事がある。
それは《下・剋・上》
勝敗記録には勝った学年、負けた学年、ラストに年月日が付く……もう、これだけで分かると思うが万が一にでも下級生に負ければ、その記録が永遠に残り、学園を卒業してからも話のタネにされてしまう。
「まぁ、しょっぱなから、ぬるま湯に浸かるより良い」
「同感だ」
そんなことを説明しているうちに教官は、全員分のパイロットカードの情報を端末に入れ終えた。
「さてと、確認確認てねっ、今年は……凄いなコイツは、始まって8秒で負けてるぞ。相手は……なるほどなコイツじゃぁ仕方ないな」
戦闘記録には簡単ではあるが、いきなり突っ込まれて、電磁ランスで胸元を貫ぬかれたと書かれている。
もちろん、熟練者が相手なら、こんなのは自殺行為だがヒヨッコには十分有効。
間合いをとって距離を計り、周りの安全確認、戦闘を始めるというのを新米共は勉強して来ているが、実戦になれば、そんな事は一々意識していたは生きていけない。
実戦では勉強通りにはならないという、これは先輩からの警告だ。
他の上級生も、下級生逹に負け星をプレゼントをしてあげているのだが、
「他の奴等は……こいつは、ちゃんと手順を踏んで確実に仕留めにいったのか……このシゴキをするから来年までに全員、成長するんだよな……おっ、ラッキーボーイ発見!!」
そこには1人だけ、上級生に勝利している下級生がいた。
「え~とっ、名前は火内 刃コイツは……」
勝利した少年の名を読み上げていると、教官が端末を指差して、
「模擬戦記録映像を見てるみるか?」
意味ありげに笑ってみせると、ユナもニコニコと笑い、
「アンタから誘うってことは余程の珍シーンが見られるって事か……分かった、こいつの相手は二日酔いで吐いたんだろ?たまにいるんだよなアホが。パワードスーツの中で吐くと、ヤベェって教えてやってるのに」
「珍しいって意味ではあっているよ」
そう言って、パソコンに指を置くのであった。