学園1
ここはシミュレーション室。
人が複数人入れる程の、大きめのカプセルが横に十台並べられ、そのカプセルの二台から1人はグリーン、もう1人はブルーの制服を着ている少年達が出て来るのだが、
「そんな……1年生に負けるなんてありえない……」
ブルーの制服を着ている少年は、顔面蒼白になって床に手を付いてしまう。
口ぶりからして、このブルーの制服を着ている少年が上級生であり、何かを争って負けたのが分かる。
そして、もう1人の少年は、落胆している上級生に一瞥してからに、目の前にいる赤い服を着ている大人に近付き、
「教官、パイロットカードです」
手に持っている物を差し出す。
グリーンの制服を着た少年は目付きは鋭く、目と髪はまるで絵の具で塗りたくった様に人工的に真っ赤だが、腰まで伸びている髪はサラリとして、一瞬女性なのではないのかと錯覚してしまいそうになる程に美しい。
「あぁ……お前達で最後だから並んでくれ」
「うっ……うううっ……」
「気にするなって、偶々だよ」
他の青い制服を着た上級生達が、床にうつ伏せている仲間に近寄って慰めながら列に戻り、もう一人の下級生は、自分が負かした上級生に冷徹な視線を送ってから列に戻っていく。
場が落ち着いたとは言わないが、体裁が整えられた所で、教官と呼ばれた男が前に出ると、
「これで上級生、下級生のレクリエーションを終わらせる。パイロットカードはこちらで返却するので待つように」
そう言ってシミュレーター室から出ていった。
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机が横に並べられて、大人達がまばらにいるこの部屋は職員室。
その職員室に、先程の教官と呼ばれた男が、担当した生徒達のパイロットカードを順番に、端末に差し込んでいくと、
「どうよ?レクリエーションという名のシゴキの結果は」
一人の女性が、先程までシミュレータ室にいた教官のパソコンを覗き込んで来る。
「なんだ、ユナか」
教官はいつもの事かと、生徒達のパイロットカードを端末に差し込む手を止めない。
「んだよ、その態度。まぁ良いさ、見てたらどうなったか分かるしね」
ユナと呼ばれた女性は、赤色のボサボサ髪を手で手入れをしながらニッタリと笑い、
「にしても面白い伝統だよな、レクリエーションは」
レクリエーション、それは新しく入って来た新入生に、たった一年でどれだけ実力が違うかを教えるのが目的なのだが、このパイロットカードには勝敗記録が残る。
ユナが面白いと言ったのは、パワードスーツのパイロット候補に合格したからと言っても、上級生と腕を競えば新入生は必ずと言っても良い程に負け星が貰え、その記録が一生残る。