学園16
赤髪の少年は、コルク銃では黄金の胸像を倒せないと踏んで、別の所から銃を用意する。
外から持ち込んだものは駄目だと、物言いを受けないようにするために店主の無茶ぶりを受けて敗北し、敗北からの劇的な勝利をする事で、周りを盛り上げるという手法を取った。
その効果は、周りから聞こえる歓声が教えてくれる。
「そこにあるお菓子は、包んでおいて下さい!!」
店主に聞こえるように、大きな声を一度だけ出す。
その姿は先程と変わらないはずなのだが、勝利したお陰で心無しか、先程より堂々としているように見えた……ように見えて良かったはずなのに、なぜかは知らないが最初の時より、よそよそしいと言うか何と言うか……そわそわしているように見えた。
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「あのライフル、どっから引っ張り出したんでスかね、アネキ」
周りが盆と正月が一緒に来たように騒いでいて、誰もそのことに触れないが。至極当然の疑問で、
「それが原因で、赤髪はそわそわしているのかも知れないな……っと」
そんな疑問にアネキと呼ばれた、ポニーテールをしている少女は片目を閉じる。
周りの騒ぎを気に留めないで、静かに佇んでいたのだが、
「その辺か……」
「あっ…お客さん⁉」
「すぐ出るよ」
店主の言葉を遮り、射的の台を飛び越えて辺りを探ると、
「邪魔したな」
言った通り、すぐ様に出て行って「アネキ」と呼んだ少女の方へと戻る。
屋台の中で何かを見つけたのか、手にした物を、手に馴染ませるかのように転がし、
「ふ~ん……面白いことするじゃん……よ!!」
「あらっよッス⁉」
「何か」を放ると、もう一人の少女がそれをキャッチする。
「あぶねぇッスよアネキ」
「大丈夫だ、豪速球で投げなきゃ死にやしねぇよ」
「……冗談でも、豪速球で投げないで下さいッスよ」
雑に放られた物を手にして目にしてみると、白い球に赤い糸が刺繡されている、間違い無い野球ボールであった。
「……これをぶつけたんスか」
今日、この新入生歓迎の催し物で、硬球の野球ボールを使うような催し物はしていない、だとしたら、この野球ボールは赤髪の少年が持ち込んだと自然と発想出来る。
「そうだろうな。ほらっ見てみな、もう一つの立役者も見れるぞ」
「もう一つの立役者?」
アネキの言うままに、野球ボールから視線を離して赤髪の少年の方を見てみると、ライフル銃を布で吹いている。