始まる者達59
『ギョッ…ギョォオ……』
後に残されたのは自分達と、目を潰されてうずくまっているドラゴンもどき。
『ドスン…ドスン……』
火内は大地を歩いて、ドラゴンもどきの側に来ると首に足を掛けて、
『バッッキィッ!!!!』
介錯と言わんばかりに、首の骨を折って殺す。
『…………』
これで全てが終わった……敵のいない静かな時間、敵のいない平和な時間……台風が過ぎ去ったかのように、穏やかな空気が戻り、生き物を引きずり込む暗い闇が、生き物に平穏を与える夜に戻る。
「げほっ…げほっ……やったね……あそこで……ふぅ…………やり合わなくて正解だよ……逃げ場を失った相手というのは怖いからね…………」
殴られたお腹を擦りながら、小此木がヨタヨタとやって来る。
原人が言った通り、手打ちにする為に小此木に対して手加減をしていて、
「うっ…ぐっ……」
「リナ…もう戦いは終わったッス……ゆっくりして良いッス……」
原人のいう通り、あのまま戦う選択をしていたら、まともに動けないリナと小此木は、殺されていてもおかしくなかった。
『…………』
火内はあの時、怒りのままに……ドラゴンのままに戦わないで良かったと思いながら、口の中に残る肉片と、鉄の味がする血を吐き出すと、
「怪我したスか?」
『…………』
心配して声を掛けてくれたミィオに、首を横に振って大丈夫だと伝える。
「お前達よくやったな……リナが動けるようになったら、中央基地に移動しよう」
そして最後に、教官達が自分達の所に来て、RLH達の群れを追い払った事を労ってくれる。
これで、全てが丸く収まったと喜ぶ場面なのだが、
「まぁ帰るのは帰るけどよ……こいつどうするよ?」
「むっ…むぅ……」
「……ペットを拾った事にしますか?」
「せめて小っちゃくなれないスか?」
『…………』
いきなり巨大なドラゴンを連れ帰ったとなれば、大騒ぎはなるのは明らか。
全員で、ドラゴンになってしまった火内をどうするかと、しかめっ面をするのであった。