始まる者達55
パワードスーツという鎧を脱ぎ捨てて、多くの利点を捨てでも、人間がやろうとしている事は……
「死ぬと良い」
その瞬間、体がゾッとした。
人間よりも勝るRLHの肉体を持っているにも関わらず、悪寒が走る。
人間はRLと戦う為の鎧を脱ぎ捨てた状態なのに、自分の体が取った行動は、
『ザッ!!』
全力の反撃ではなく、全力の回避……背中に突き付けられた何かが、心臓を狙っていると体が叫ぶ。
「逃がすか……」
あの時、小此木が原人に立ち向かったのはわざとであり、投げ飛ばされた後に気絶したのは演技である。
原人がどの位の敵なのかを知る為と、小細工仕掛けるための準備。
動きからして武術を身に着けているのは分かったが、実際に手合わせすると圧倒的だった。
普通のパワードスーツといえど、その重さは人が簡単に持ち上げられるものでは無い、RLHが人間よりも優れている肉体を持っているとはいえ、パワードスーツを宙に浮かせたのは、力の作用を分かっているから。
真正面からやり合うのは、普通の人間の肉体で、普通のパワードスーツを持つ自分には得策では無いと、地面に叩き付けられた後、原人の意識から消える為に気絶したフリをしたのだが、原人は周囲の警戒を切らなかった。
少しでもこちらが動けば、原人は狸寝入りに気付いてしまう……どうしたものかと空を見上げていると、空から火内達が落ちて来た。
その時、原人の集中力が乱れたのを感じて、手と腕の部分だけを残してパワードスーツをこっそりと脱ぎ、闇夜に紛れて息を潜める。
原人の集中力が完全に切れる瞬間を狙いながら、沙羅曼蛇の弾薬を一本だけ拝借し、牛の乳しぼりのように親指と人差し指、中指で包む。
そして、原人が仲間を救いに行こうとした瞬間、大地を舐めるかのように滑らかに走り出して原人の背中に張り付き、弾丸の先を心臓に位置に付けると、
「死ぬと良い」
『ボッッ!!』
『……⁉』
弾薬の底を叩き、雷管を刺激すると弾丸が飛び出して原人の肩をえぐる。
「ちっ……」
完全に仕留めたと思ったが、やはりRLH、心臓の位置に弾丸を付けられたのを感じた次の瞬間、体を捻らせて致命傷を回避した……が、
「ミィオ!!」
「任せるッス!!」
このタイミングなら、ミィオに任せれば仕留められる。
小此木はミィオとバトンタッチして……
『バァァァッッチィィィィィィィ!!!!!!』
突然、リナ達の方で閃光が走る。