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学園15

さっきは挑発に乗った赤髪の少年であったが、負けて意気消沈しているのか、何も言い返さずに黙ったまま離れていく。



普通に考えれば、黄金の胸像をコルクで倒すのは不可能であり、多くの景品を手にした事を考えれば、実質的には赤髪の少年が勝ったと言っても過言では無いのだが……



終わりよければ全て良し、その場を盛り上げて無茶な条件を突き付け、その勢いで勝利をした店主が上手であり、無茶な内容に冷静さを欠いて勝負をした赤髪の少年の方が、劣っていたのかもしれない。



終わった祭りの、勝利の余韻を味わった店主は、



「そろそろ品を並べ直すか片付け……お~い少年、お菓子はここに置いとくから後で取りにおいで~~」



いい加減、悪役をするのが疲れたのか、最後は穏やかに声を掛ける。



どうやら店主も店主でエンターテイメントとして、祭りを盛り上げるために、ああいう事をしたのかもしれない。



そして、その言葉を皮切りに、周りの野次馬も馬から人間に戻ると、



「そろそろ行こうか」



「次どこ行く?」



「楽しかったな」



「次探すか」



また祭りを求めて、歩き出してしまう。



穏やかな雰囲気が戻り、最高潮だ潮は引いて、和気あいあいとした時間が流れる……はずだったのだが、



「俺が遠吠えを上げる時は……」



意気消沈していたはずの赤髪の少年が、小さな声を漏らすと、グローブの中に隠していたライフル銃を静かに取り出し、



「勝利の咆哮だーーーー!!」




勢い良く振り返りながら叫んだ声が響くと、穏やかに戻っていた雰囲気が一気に払拭され、



『ガウゥーーーーーン!!!!!!』



今までのコルク銃の脆弱な空気音とは違い、火薬ならではの爆発音が一気に響き渡る。



「ほひっ…!?」



『ガキーーーーーン!!……ガッゴン!!』



火薬の爆発音の後に続き、店主の近くを何かが通り過ぎたと思った時には、黄金の胸像が吹き飛んで地面に叩き付けらると、黄金の胸像は悔しそうに床に顔を押し付けて、後頭部を晒す。



数秒の間に連続して鳴り響いた音は、周囲の者達を沈黙させる。



猫がビックリして動けないように、誰もが動かない状況で、一番最初に動き出したのは赤髪の少年。



鋭い目付きで黄金の胸像を睨み続けていたが、その必要性が無くなった事が分かると、闘志を治めるように目から力を抜き、ライフルを構えるのを止めて下に向け、



「……負けちゃいけないんだ……ジン」



小さく、自分に言い聞かせるように呟いた。



そうして、赤髪の少年がその場を動いてから少しして、



「やっったあぁぁぁぁ!!!?」



「救済キタァーーーー!!」



「お帰り俺のコレクション……いらっしゃいnewコレクション!!」



祭りを楽しむ人々に戻ったはずの奴等が、息を吹き替えしたように野次馬へと姿を変えた。



その様子は、まさに狂喜乱舞と言って差し支えない、現にラムネを振ってビール掛けのようにして喜ぶ奴までいる。

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