始まる者達47
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嫌な思い出が、苦しみと共に蘇る……小さい頃の嫌いな思い出……海と深海の狭間の青い瞳に、青い髪はとても美しかった……同世代なら誰しもが必ず、核露の美しさに心奪われて恋する……それ程までに美しい存在。
だけど、その美しい存在に心奪われたのは同世代だけでは無い……齢を重ねた、善悪の分別を付けられる年齢に達している者も一緒であった。
普通の大人なら年齢の差を考えて、自分の世代の子では無いと、どれだけ美しくても手を出そうとしないが……良識の無い大人が手を出した……
金を積んで、地位をチラつかせて……核露は養子として身売りされる事となり……辱めを受ける前に、核露は自分の髪を顔をズタズタに裂いた……
子供が顔をズタズタに裂いた……それを隠蔽したかったのか、顔の治療が終わると、子供にも関わらずに低所得の……鳥かごの下層の団地に一人で放り込まれた。
本当に嫌な思い出……思い出したくない思い出……そんな嫌な思い出でを思い出すのは、苦痛の中で死に至るからかもしれない……
体が焼けて、命が燃え尽きて……残されるのは辛かった思い出……
「俺、火内 刃、そんでこっちは妹の凛」
だけど、その辛かった……思い出したくない思い出には、大切な思い出もあった。
団地に住む一人ぼっちの子供……それが何かしらの理由で押し込まれていると察した周りの者達は、核露の事を忌み子のように近付かないようにしていた……
友達もみんないなくなって……新しい友達も出来なくて……一人で過ごしていた時に、引っ越して来た火内。
最初は彼が誰かも分からず避けていたが、彼にも親がいなくて、妹と二人っきりだと知って……いつの日かから一緒にいるようになって……彼の事を知るようになって……
(ジン……そっちに逝くよ……)
少しも悲しくない……死んでしまう事は終わりなのだろうが、それでもジンに会えた……きっと死んだ先で生まれ変われる……だから、あの赤い狼に……ジンに会えた……自分が死んだら……ジンに……
(おかわり…おかず多めで……)
(お肉たっぷりが良いッス)
(アタシは全部盛で!!)
思い出の底に辿り着いて、このまま生まれ変われば良いやと思ったのだが、何気無い出来事が思い出として、火内の胸に過った。